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2010-03-26

『外事警察スペシャル~リミックス版』

3月24日に放送された
『外事警察スペシャル~リミックス版』
http://www.nhk.or.jp/dodra/gaiji/next/special.html
を観た。

本放送を全てリアルタイムで観たし、1月にハイビジョンで一挙再放送されたものをブルーレイディスクに保存してあるので、今更、短縮版を観る事もなかろう…と思っていたのだが、やっぱり観てしまった。
だって、55分×6話を89分に“リミックス”したっていうんだから、どんな無茶してるのかなぁ~と気になって。(笑)

某幕末ドラマに納得できないために体内・脳内に大量にたまった毒素が発酵して、別の毒を呼んだのか。
毒をもって毒を制す、ってこと?

あるいは、訓覇P+堀切園Dの硬質でガツンとスパイシーな作風の人間ドラマを、やさぐれた心が欲していたのかもね。(笑)

89分に『外事警察』のエッセンスがギュッと凝縮されているので、試食用というか、3月26日発売のDVDのプロモーションビデオというか…な感じで、名場面を一挙に見られて、あのヤバイ世界にまた入ってみたくなってしまった…。
そうなのだ。
一度観た人間にも、そう思わせるように、ちゃんと計算されて、89分に削がれていたのだ。
まんまと制作陣の思うツボにはまってしまった私である。


これだけ短くしてあっても、ストーリーが立体的に緻密に組みたてられていることも、人間の深い闇を抉り出しながら、その闇を照らす「信じる。」というシンプルで太いテーマが次第に浮かび上がっていくのも、ちゃんと伝わるようにしてある。
そのため、もう一方のテーマである、国益と個人の幸福、という線は、やや後ろに引っ込めてあった。
これは89分で、めまぐるしく動くダイジェスト版に完全に盛り込めるシンプルなテーマではないから、こちらについてはDVDでじっくり観て考えてね♪ってことね。


リミックス版が初見の方には、89分間、ついていくだけで疲労困憊で、すっ飛ばしすぎて分からない部分もあったかもしれないが、あくまでも、お試し版なので…と割り切って、全編を見たくなるように、かつ、後を引くように作ってある。
話も登場人物も大胆に整理され、テーマが明確に伝わるように、大吟醸のように芯の部分を残して取捨選択され、絞り込まれ、ギリギリまで削がれている。
それでも、というか、だから尚更に、全てのシーンに緊張感があったし、強い台詞がビシビシ刺さってくる。

改めて、優秀な創り手と演者が結集した、濃密で高レベルな面白いドラマだと思った。
主演の渡部篤郎郎さんと尾野真千子さんの好演・熱演は言うに及ばないが、そのほかの出演者にも一切の抜けが無い。
特に、住本率いる外事4課住本班の面々は、やはり出色だ。
しかし、金沢さん(北見敏之)が出るたびに「柴田さま!」、森永さん(渋川清彦)が映れば「ロックな岩崎さん!」、そして久野さん(滝藤賢一)が登場するたびに「タッキー!!(役名で呼べないところが…笑)」と、邪念だらけになってしまったのは反省点。(笑)


以下は、リミックス版というよりは、全編を見終わったときに感じたことが改めて蘇っての感想になると思うが、昨年の最終回直後は、まとめられなかったので、思いを吐き出す意味で、書いておく。

私は、この作品に登場する女性それぞれの、己の弱さを飲み込んだ上での強靭な生き様がカッコイイと感じていて、それが、このドラマにひきつけられた要因のひとつでもあった。
特に、余貴美子さん演じる村松官房長官のクールな威圧感はゾクゾクした。
吉田東洋と対決させたい。(笑)
揺れているようで実はしっかりと碇を下ろしている愛子(石田ゆり子さん)、凛々しく強いのに揺らぐ五十嵐(片岡礼子さん)も、複雑な魅力に溢れている。
愛子には子供がいないのに、不思議と母性を感じる。
住本もジュリオも、そして陽菜も、愛子に救われたように思えるからかもしれない。
その愛子も、住本によって闇から引き上げられたのだから、人と人の関わりから生れる心の動きというのは、計り知れない。
そして、外事警察の仕事と住本を疎みながら、その魅力に囚われていた五十嵐。
住本に最後の願いを聞き入れてもらって、彼女はやっと解放されたように見える。
しかし、本当は、自分の心を掴んで放さなかった外事警察と住本と繫がりを持って終われたから幸福だったのではないか、とも思う。
優秀な防諜捜査官は、皆、そんなふうにアンビバレンスになってしまうのだろうか。

正義の意味を自らと住本に問い続けながら、清濁併せ呑んで一人前の防諜捜査官に成長していく陽菜のラストのブラックな微笑にも痺れた。
うーん、こういうふうにきちんと、様々な経験や係わり合いを積み重ねて進行していく人物の変容が観たいんだ。
対立者から、動機付けの薄い凄惨な暴力と辱めを受けて、ポンと分裂して暗黒化なんて某幕末ドラマみたいなこと、観ている殆どの人は納得できないはずだ。
(まだ文句を言っている。)

「この世に真実なんてどこにも無い。それでも人は何かを信じる。騙されようと、裏切られようと。信じぬくことでしか救われないからだ。」
( by 住本健司)

終盤に住本が問わず語りに言うこの台詞が、この作品のテーマだと思うのだが、この青臭い直球な台詞を、住本という複雑極まりない男が極限状態の場で淡々と口にするから、言葉に強さがある。
信じては裏切られ、騙し騙され、幾多の修羅場をくぐり、辛酸を舐め続けて誰も何も信じていないように見える男。
そんな住本が紡ぐ言葉が、それまでのエピソードやふとした描写の積み重ねの上に静かに重なるから、ガツンと心の深部に響いたのだ。

リミックス版が初見だった方で、この異色ドラマのハード&ダークな世界やクセのある濃密な味わいが気になった方、オススメです。
試して損はありません。
緊張感のある硬派なドラマ、腹にガツンとくるドラマをお求めの方も、是非。
ただし、容赦なくダークでエグ味が強いし、観た後でハッピーにはならないので、御注意を。

スタッフブログを読むと、更なる展開を匂わせているので、続編(ドラマか映画)もありかも?
http://www.nhk.or.jp/drama-blog/99240/

うーん、そうすると訓覇さんが益々お忙しくなられて、『ハゲタカ 2』が遠のくなぁ…。

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