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2010-06-28

『龍馬伝』第26回「西郷吉之助」~薄いでごわす。

……薄い。
薄いでごわす。

いえ、別に西郷どん役の俳優さんの頭髪のことじゃないですよ。
なーんか、この回の印象が、ね。
この1週間近く、私の頭の中が『ハゲタカ』で占められていたから、というだけではないと思う。
前回は、蛤御門の変という歴史的事件と主人公の進路に大きく関わる海軍操練所閉所があり…で、今回はその余談とか後日談?みたいな感じだった。
進展が無いけれど、第2部最終話で大きく跳躍するために、ぐっと身を屈めているという印象は受けず、つなぎの回のように思えた。
だけど、こういう回のスパイスになっていた容堂公は、すっかり恐ろしい威圧感が消滅して、病んじゃってるし。(涙)

ただし、土佐にいる人々の絶望的な苦悩と、そこからの救いを希ってギリギリのラインで自分と闘うさまを表現した凄い芝居は、鮮烈に心に残った。
もう、圧倒されっぱなし。
特に、以蔵。
弥太郎の態度から、饅頭に毒が入っていることに気づきながらも、それが武市先生の情なのだと理解して口にしたかったのに叶わず、自分では舌を噛み切る力が残っていない、と呟く一連の場面は凄かった。
セリフも動きも最小の中での佐藤健さんの繊細な演技に、以蔵が肉体的・精神的苦痛が頂点を超えてしまった後に、彼に訪れている心の静けさ、みたいなものを感じさせられて、一瞬、ゾクッとした。
もしかして。
この子は天才よ!ですか?月影センセイ!


武市から託された毒饅頭を自宅に持ち帰った弥太郎。
無用心だなぁ…。
その饅頭をめぐる岩崎家らしい騒動があった後、毒饅頭を託された事情を家族にぶちまけ惑乱する息子に、武市と以蔵を苦しみから救ってやれと諭す弥次郎の迫力に、家族が息を呑む。
蟹江さん、やっぱりいいな。
一瞬で、御自分がまとう空気も、場の空気も変えてしまったようだった。お見事。
落ちぶれてても、ごくつぶしでも、突然に(笑)侍の誇りを失っていない弥次郎に戻って、武市たちの痛みを共感しているのが伝わった。
父の言葉に突き動かされた弥太郎が、以蔵に毒饅頭を手を震わせながら渡し、やっぱり自分にはできない!と奪い取ってしまうまでの、逡巡や哀しみや怯えが巡る表情と動きも、これまた息を呑んだ。
弥太郎は、巻き込まれてしまった形ではあれど、もう傍観者ではいられなくなったのだが、自分が他者の運命を変える覚悟なんて、もちろん出来ていない。
こうして、自分の中を覗き込んでしまった弥太郎の恐怖が、香川さんの凄絶な表情に出ていて、このシーンの香川さんと佐藤さんのお芝居は、本当に鳥肌もんでした。


前回は取り乱しモードだった武市先生。
和助から以蔵が生きていることを聞いた後の複雑なリアクション。
早く楽にしてやりたいという気持ちと、ホッとした気持ちがない交ぜになっているのだろう。
そして、今回は、ややマイルドSだった後藤様の取調べには、またまた「大殿様に会わせてつかあさい!」と絶叫ですよ。
うーーん。
武市先生が投獄されてから切腹まで結構回数があるので、史実どおりではないにせよ、やっと最期になって、彼のカリスマぶりと有能なリーダーぶりを発揮する獄中闘争が繰り広げられるのかと期待してたのに、結局、内向きな行動原理で動いて終わってしまいそうな匂いがプンプンする。
武市さんは自分を崇拝する弟子達に邪魔者たちを次々と暗殺をさせたけど、愛妻家だし弟子にも優しいし、美しいものを愛する繊細な心の持ち主だし、本当は“良い人”だったんですよぉー、みたいな纏め方をされている感じ。
そりゃ、そうですよ、武市さんには、そういう側面もあったし、そこも大きな魅力だ。
だけと、忘れちゃいけないのは、武市半平太が幕末史に名を残したのは坂本龍馬の幼馴染としてじゃない。
龍馬も心酔し傾倒した土佐勤皇党のリーダーであり、藩政を操り朝廷も動かした大物としての働きですよ。
下士のために、土佐のために、日本のために…という外向きの動機で動いてきたこの人を、このドラマでは、結局、ちっこい内向きの動機で行動する独りよがりなダメ大将に描いてしまった場面が多すぎた。
そういう人物の悲劇を描くつもりで割り切って創作して、最初から最後まで筋を通すならまだしも、龍馬のオトモダチに相応しい人にしようとしてなのか、中途半端に史料に残る人物像に近づけた態にしたものだから、ブレブレな印象が残ってしまった。
葛藤や動揺やストレスを表現するのに、不可思議なインフレ演出をした回もあったしさ。(東洋キックとか、黒マフラーとか、過呼吸とか。)
にも関わらず、半平太役・大森南朋さんの熱のこもったお芝居によって、人物像が見事に肉付けされて陰影に富んだ実在感があっただけに、なんとかラストは武市半平太らしい姿を描いて欲しいものだ。

『武市半平太伝』ではないのだから、江戸や京都で武市が他藩の志士達も魅了したことや、土佐では和助のような下士たち(入牢中は、多くの牢番が武市サポーター)から容堂の実弟・山内民部までの広い層に支持者があったことを細かく描け、とまでは言わない。

とはいえ、主人公に合わせたサイズにしてしまおうとして来たが故に、リーダーのとしての大きさが描かれず、結局、最終局面になっても弟子をこれ以上苦しめたくないという、一見すると優しいけれど、実は自分を苦悩から救いたいという身勝手さが隠れているような流れになってしまったのは、やっぱり残念。
この毒饅頭エピの描き方は、武市の行動指針である武士道と反すると思うし。
これって、切腹した侍を介錯するのとは意味が違うでしょ。
…まあ、武市の人物設定を決めた時点で、以蔵との関係も変えなきゃいけないし、毒饅頭の使い方も変えなきゃいけなかったわけで、もう消去法でこの道しか残っていなかったわけだけど…。
脚本的には、毒饅頭エピソードで、武市さんは優しい人で以蔵と強い絆が結ばれている…というフォローをするつもりだったのかもしれないけど、結局、今回の武市さんは以蔵と弥太郎父子に救われた感じだったなぁ…(泣)


えーっと、海軍操練所閉所のエピ、私はドーデモエエガジャーな態度で観てしまった。
勝テツヤ先生が苦手な私は、熱弁をふるう勝のアップが映るたびに内心、「もうテツヤは映さないでいいから、佐藤与之助,先生を映してよ!!」と拳を握り締めていたのだった。
ダメ?


さて、今回初登場、薩摩の傑物・西郷どん。
何しろ国民的スターで、濃いビジュアルイメージのある英雄なので、高橋さん、どうだろうと思ったが、従来イメージよりやや薄い(だから、頭髪じゃなくてイメージよ。)けれど、主人公の薄さに合わせているからちょうどいい感じかも。
それに、笑顔の裏に何かありそうなブラック西郷っぽい感じが出ていて、今後どう人物造形がされていくか期待。
だけど、西郷どんと龍馬との初対面シーンの会話がちょっとなあ。
西郷どんのポッチャリ好きという掴みはOKに始まり、お龍の話を経由して戦はいかんぜよdashオチに持っていくところね。
なんか龍馬、意外と策士じゃーん?と思えるかというと、否、今まで龍馬くんとは比べものにならない修羅場を幾度も乗り越え生き抜いてきた西郷どんには、絶対に魂胆バレバレだったと思うけど。
それで、例によって、「日本人の味方じゃ。」に辿りついたときには、思わず「出た!日本人!」とつっこんだぜよ。
そりゃー、ワールドカップで日本チームが決勝進出して嬉しい気分は、スポーツ音痴の私にだってあるけどさー。
なんだか、脚本が龍馬に言わせている“日本人”て、そういう程度のゆるいレベルの日本人って印象なのだ。
その日本人ってのと、外にも内にも危機に直面しまくっていた幕末のこの国の日本人というのは、意味も重みも違うんじゃないの?
“日本人”と言わせれば、龍馬がグローバルな視野を持つ先進の男に見えると思ってるんじゃないの?
とにかく、「日本人」が、龍馬の決めゼリフになってて、出るたびにしらける。
今更だけど、もっとセリフの言葉を大切にして欲しいですたい…。

でも、「薩摩人でごわんで。」と日本人・龍馬くんを一蹴した西郷さん、それでよかでごわす。(笑)

そして、映画『ハゲタカ』ファンおなじみのタッキー(滝藤賢一さん)登場ですよ!
つい数日前には江戸城常磐橋門の前でイケメンを刺して金を奪っていた(違うってば)男が、今や大藩・薩摩の切れ者家老ですよ。
出世したのう…。
『篤姫』の小松帯刀がお好きだった方には、「えっっ」という感じかもしれない。
実は、私も小松帯刀のイメージが『篤姫』で出来上がってしまっているので、タッキーの小松様を観た時には、「小松帯刀というより、大村益次郎っぽい……」と一瞬、思ったけどさ。(笑)
今後、小松帯刀のイメージが、タッキーで上書きできるかどうか、楽しみ。
とかいいつつ、第3部を観るかどうかは第28話次第かな…。
とにかく、滝藤賢一さんは職人肌で雰囲気のある役者さんなので、彼を御存知ない方も、ぜひとも注目してくださいね♪(母な立ち位置)


それから、なかなか味のある(?)おフランス語を操っていた小栗忠順(上野介)を斉藤洋介さんが演じておられたのが、目をひいた。
小栗上野介といえば、徳川埋蔵金伝説…と俗な連想をしてしまう私。
だが、この人が、今風に言えば大量の不良債権を含め経済問題を山ほど抱えて腐りかけた瀕死の幕府を、組織の内側から救おうとして必死に奮闘し、薩長に好き放題にされていく社長…じゃなかった将軍・慶喜様に異を唱え.る姿は、なんだが『ハゲタカ』の芝野さんを思い出させる。
…ちょっと強引?
(そもそも、龍馬伝で、そこまで描く可能性は低い。)
あ。
でも、小栗の末路を思うと、芝野さんと重ねるのはダメだなぁ。
芝野さんを失ったら、鷲津はもう再生できないかもしれないし。
…って、まだ『ハゲタカ』祭の後遺症が。
失礼しました。


さーて、来週の『龍馬伝』は~~。
不吉なサブタイトル、「龍馬の大芝居」。
番組HPによれば、龍馬が土佐に戻って武市を救おうとするらしいけど、もう、龍馬くんは余計なことしないで欲しい。ぶーぶー。
予告映像を観ただけで、危険なムードが漂いまくっているでごわす。
ただでさえ、第25回から武市さんへのパーソナル面での毒饅頭絡みのまずいフォローで、武市半平太の格が落ちているのに、龍馬くんが暴れて、続く武市さんの終章を台無しにしてくれたら、取り返しがつかないじゃないのさ!
お龍さん、そいつに後ろ回し蹴り(「SP」じゃないぞ)を喰らわせて、寺田屋の布団部屋に閉じ込めておいて頂戴。(乱暴者)

唯一の楽しみは、myお気に入りキャラhappy02ビエール溝渕さん久々の登場ってことだけですよ。

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