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2010-07-01

『マネとモダン・パリ』@三菱一号館美術館

この4月、丸の内ブリック・スクエアにグランド・オープンした三菱一号館美術館に、6月になって、やっと行く事が出来た。
鑑賞当日に作った下書きメモから記事に起こしたのだが、訪問してからかなり時間が経ってしまったため、印象が伝わりにくいかもしれない。
まあ、いつものことなので、ご容赦くだされ。


マネとモダン・パリ
三菱一号館美術館 開館記念展<Ⅰ>

2010年4月6日~7月25日
http://mimt.jp/manet/



ブリックスクエア自体には、もう何回か出かけたが、ブログで話題にするのは久しぶり。
今回は、庭にいる人が随分と多くてビックリした。
気候が良かった(訪問日は晴天で暑かったが…)せいだろうか。
庭のところどころに薔薇をはじめとした花々が彩りを添えていた。


「三菱一号館」は、鹿鳴館を設計したことで知られる英国人建築家ジョサイア・コンドル(1852~1920)の設計により、1894年(明治27年)に竣工しました。
クイーン・アン様式を用いた赤煉瓦の建物で、丸の内に初めて誕生したオフィスビルでした。

一号館建設ののち、次々と煉瓦造のオフィスビルが建設され、その街並みは「一丁倫敦」と呼ばれ親しまれていました。
丸の内オフィス街誕生から百年余り、1968年(昭和43年)に解体した一号館は、当時の設計図面や保管部材、写真資料などから明治期の姿を忠実に復元、2010年4月6日、三菱一号館美術館として生まれ変わります。
三菱一号館美術館HPより)

 …ということで、生まれ変わった三菱一号館。

Dsc03778

美術館入口。

Dsc03787

複数のテレビ番組で取り上げられたせいか、建物に入ってすぐに大行列。
美術館スタッフが逐次、入口で丁寧に案内してくれているので、皆さん大人しく4列に整列してじわじわ進む。
到着から展示室入場まで30分程度かかっただろうか。

チケットカウンターのある部屋に入るところで、人数がコントロールされ、更にチケットカウンター前で適宜、空いた窓口に案内されるので不公平感もなく、窓口前が混雑することもなかった。
私は知人から招待券を頂戴していたのだが、招待券や前売券もチケットカウンターで入場券と引き換えてもらう必要があるのだ。
電車の改札のような入場口で、入場券を通してもらって中に入る仕組み。
ここを通ると3階の展示室に上がるエレベーターに案内される。

このように、建物の都合上、ところどころで関所(?)があるので、どうしても入口で行列になるのだが、一度にどっと入場させずにコントロールするから、展示室でひどく混雑して身動きできない!という状態にはなっていなかった。

もちろん、人気の作品前は混んでいたけれど、皆さんオトナの鑑賞態度で、うまく譲り合って作品を楽しんでおられた。
マネの作品数は決して多くないため、所蔵する美術館では目玉作品と位置づけされていることが多く、貸し出してもらうのが困難なので、約80点もの作品が一堂に会する本展は、とても貴重な機会だ。
…と、書いたが、正直なところ、不勉強なもので、マネの有名な絵は知っていても、彼の画家としての足跡とか個人的な背景などは、あまり知らなかった。
なので、今回の展覧会で初めて知った事が沢山あったし、純粋に作品を楽しむという側面からも、改めて、というか初めてマネの魅力を実感できて、充実した展覧会だった。

では、印象に残った作品をいくつか挙げてみる。



【第1章 スペイン趣味とレアリズム】で、17世紀のスペイン絵画、とくにベラスケスにマネが傾倒していたことを、初めて知った。
マネの絵というと、私には、黒い衣装の人物画の印象が強い。
ベラスケスの、対象の人間性をクローズアアップする描写力や、黒の使い方などには大いに影響を受けたようで、やがて、それらの要素を自分のものとして、マネ独自の人物画の魅力になっていったたことも理解できた。

スペイン趣味+美女(笑)な一枚。

Ppc01_3

「ローラ・ド・ヴァランス」 オルセー美術館蔵

今回、初来日とのこと。
マドリード王立劇場のプリマ、ローラ・ド・ヴァランスの肖像画。
黒に赤の花模様を配したf華やかな衣裳をまとった黒髪のイスパニア美女の艶やかなこと。
いやー、ほんと、マネは肉感的な美人大好き!だ。(笑)


こちらも印象的だった。

Pic01

「エミール・ゾラ」 オルセー美術館蔵

マネと親交のあったゾラの肖像画。
ゾラの背後には、酷評された「オランピア」のレプリカや、パリのオトナ♡なビクニックを描いたセンセーショナルな「草上の昼食」のポーズの参考にしたラファエロの版画「バッカスの勝利」、そしてジャポニズムをうかがわせる浮世絵が貼ってあり、横には屏風も。
事前に観たテレビ番組で紹介されていたとおり、裸婦オランピアのオリジナル画は鑑賞者を観ているが、この絵のオランピアはゾラに視線を向けていた。
(忘れずに確認して御満悦の私/笑)
大胆に新たな表現を試み続けたマネの苦闘を理解し擁護し続けてくれたゾラへの想いが見える。
マネはドガとも同志的関係の親友だったとのことで、こういう才能ある表現者同士の篤い友情って、凡人の私は憧れるな。

さて、最も人気が高かったのは、やはり【第2章 親密さの中のマネ・家族と友人達】だ。
特に、本展のポスターになっている作品のモデル、ベルト・モリゾの肖像画5点は、小さめの展示室に集められてあり、華やいだ雰囲気。

Pic03_2

ポスターになっている「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」(オルセー美術館蔵)の前は、予想していたほどに混んでいなかったので、じっくり鑑賞できた。
意志の強さを映す瞳が、観るものをひきつける美しいベルト。
グレーの背景に黒い帽子とドレスの美女が映える印象的なポスターに、目を奪われた方も多いのでは?
美女大好き♡の伊達男マネは、ルーブル美術館で模写をしていた彼女を見初め、知人に紹介してもらってモデルを依頼したそうだ。
これがきっかけで、ベルトはマネに師事するようになった。
ベルトはマネ同様に裕福なブルジョアの子女で、ベルトの母は娘がマネのモデルを務めることに眉をひそめていたそうだ。
画家とモデル、画家と女性の弟子…って世間に色々と想像されやすいものね。sweat02
マネは出あった美女達に詩や絵を送ったりするマメなパリジャンだったが、そこまでを楽しんで、終わり。
モデルたちとも深い関係になることはなかったらしい。
きちんと家庭を守る紳士だったのだ。
そして、魅力的なベルトに深入りしないためにか(?)彼女を弟に紹介し、結局、ベルトはマネの義妹になるのだが…なんたがマネは屈折してる気がする。(笑)
そして、ベルトは結婚後、マネのモデルを務めることはなかった。

今回、ベルトの肖像画を一度に複数、見ることができたのだが、やはりマネが描く他の女性モデルだちと、一線を画している。
ベルトの肖像画は、絵の題材に合わせてモデルをセッティングしているというのではなく、ベルト本人の美しさと内側から溢れ出るような生命力にマネ自身が魅せられているのが、絵の前に立つと伝わってくるのだ。
「オランピア」や「草上の昼食」でモデルを務めた、お気に入りモデルのヴィクトリーヌ・ムーランも、物怖じしない視線を鑑賞者に投げてくるが、これはマネが指示した挑発的で謎めいた視線だ。
一方、ベルトの肖像画は、とても自然で柔らかい。

私が特に気に入った一枚は、こちら。

Pic04

「横たわるベルト・モリゾ」 マルモッタン美術館蔵

活発で聡明なお嬢さんらしい表情を浮かべていて、彼女の人柄が伝わってくるようだ。
ベルトも、自身の肖像画の中で、この作品が最も気に入っていたとのことだ。
それだけ、この絵がベルトの魅力を描き出している、といううことだろう。
描かれるベルトも構えたところなく自然体で快活そうな表情を浮かべている。
マネへの信頼と敬愛があってこその表情だ。
ベルト自身も印象派の画家であり、日本で展覧会が開かれたこともある。
彼女の作品も、改めて、観たくなった。


【第3章 マネとパリ生活】が、この展覧会のテーマの中心部ともいえる。
経済的にも文化的にもリッチな環境で育ったダンディなパリジャンのマネは、急速に発展して近代的な大都会へと変貌していくパリの生活を楽しみ、また、そこで暮らす人々の姿をリアルにクールに、キャンバスの上に描いていく。
マネや同時代の作家の作品とともに、当時のパリの写真も多数展示されていて、絵に描かれている時代の空気を感じる一助となった。
晩年の傑作「フォリー・ベルジェールのバー」の習作もこのコーナーに、完成版の写真と並べて展示してあり、面白かった。

私が抱いている画家・マネ像は、都会のクールな人間観察者、というイメージなのだが、こんな軽妙で分りやすい作品もあった。
展覧会の解説では、この頃、自然主義的な作品を描いていたとのこと。

Pic05_3

「ラティエ親父の店」 トゥルネ美術館蔵

晴れた日、オープンカフェでグラス片手に女性を口説く伊達男。
もう一方の腕は、さりげなーく女性が腰掛けている椅子の背に回されている。
少し離れて、注文をとりにいくタイミングを見計らっているようなギャルソン。
パリのカフェの“あるある”な光景?
なんだか微笑ましい。


このコーナーで、不思議と、目と心が惹きつけられたのが、この小品。Pic06

「レモン」 オルセー美術館蔵

鮮やかなレモンが黒い皿に置かれているだけで背景はない。
小品なのに、不思議と目をひく。
多くの鑑賞者が長く立ち止まっていた絵だ。
もちろん、私も。
晩年、病で歩行が困難になったマネは、身近な画題を好み、特にレモンは良く描いていたそうだ。
マネといえば、人物画のイメージだが、このような静物画も描いていたことを、初めて知った。
ミニマムで静謐な作品。
この時のマネの心境を映したものなのだろうか…。


今まで、あまり多くを観ることがなかったマネ作品を間近に見ることができて、作品の背景と彼の画業の歩みを知る機会を得て、本当に充実した時間だった。
ちょっと大げさな表現だげれど、私にとってのマネを“発見”した場だったような気がする。
マネ・マニア(?)の方々はもちろん、私のようなマネ初心者も楽しめる内容だった。
まんぞく、まんぞく。
さすがに開館記念展。
三菱一号館美術館の、並々ならぬ力の入れようや熱意がしっかり感じられた。
今後の企画にも期待しています。
(それにしても、オルセーのお宝の多くが来日しているなあ。六本木のほうも早く行かなくては…sweat01


鑑賞後はミュージアム・ショップ「store 1894」へ。
企画展の特設スペースでは、絵葉書や文房具のほかに、エコバッグやTシャツなどのオリジナルグッズを販売しており、大盛況。
そして、常設コーナーは、オシャレで可愛いステーショナリーやアクセサリー、アート関連書籍などのコンセプト・ショップになっていて、こちらも立錐の余地がない混雑ぶり。
いろいろ気になるものがあったが、もう少し空いている時にゆっくり見たいので、今回は何も買わずに一通り見ただけで通過。

それにしても、ブリックスクエア全体が大人気で、三菱さんホクホクだろう。
あの世で岩崎弥太郎も笑顔になっている違いない。happy01

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コメント

美冬さん、こんばんは^^

わたくし、美術にはまったく造詣が深くないのですが、19世紀末~20世紀初頭の画家の絵に好きな作品が多いんです。
一番好きなのはラウル・デュフィ(明るい南仏風の色合いが特徴の画家なのに野獣派ですって。。。)
フランス印象派も大好きですよ!
なので美冬さんの美術展レポ楽しませていただきました♪
ベルト・モリゾってとても魅力的ですね。
確かに見たことのある絵なのですが、タイトルも知りませんでした。
一枚の絵にまつわるエピソードってドラマチックです♪
たくさんの画像アップもありがとうございました。
この美術館の建物も素敵~~♪

アンさん

いらっしゃいませ♪

「マネとモダン・パリ」は、充実した良い美術展でしたので、自分の感想メモをかねて記事にしてみました。
拙いレポートにコメントを頂戴できてうれしいです。
美術館の建物も、とても洒落ていて素敵でした。
なぜか、赤レンガは、女性をひきつけますね。(笑)
三菱が大規模な再開発を進行している高層ビルだらけの丸の内ですが、100年前には、ああいうレンガ造りのオフィスビルが立ち並んでいたと想像すると、素敵ですね。


>>一番好きなのはラウル・デュフィ(明るい南仏風の色合いが特徴の画家なのに野獣派ですって。。。)


わぁー、私もデュフィの絵は好みです。
マティスが大好きなので、同じように明るくてリズム感のある、野獣っぽくない野獣派仲間の(笑)デュフィの軽やかで透明感あるタッチも好きなんです。
全国的に、妙な天候が続いていますが、早くデュフィの絵のような明るく軽快な空が見たいですね。

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