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2010-08-28

有元利夫展 天空の音楽@東京都庭園美術館

いつものことながら、展覧会の感想記事のアップが遅くなってしまった。
随分前に書いてあったのだが、載せる写真を迷ってそのままにしてしまい、すっかり放置状態に…。
けっこう長々と書いたのだが、鑑賞時から1ヶ月近く経過してしまったので、少し手直しした。
展覧会鑑賞後のランチ・レポートはさっさとアップしたというのに。全部、酷暑が悪いのよ…(泣)。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


有元利夫の名前と作品を知ったのは、5~6年くらい前だったろうか。
恥ずかしながら、わりと最近のことだ。
確か、友人宅に飾ってあったカレンダーで知ったのだった。
独特のタッチの作品の実物を見てみたいと思ったが、その機会が無いまま数年が経ち、今夏に東京庭園美術館で回顧展が開催されると知り、楽しみにしていたのだ。

庭園美術館に足を運ぶこと自体が久しぶりだったので、旧朝香宮邸と庭園を鑑賞できることも楽しみにして出かけた。

没後25年 有元利夫展~天空の音楽

東京庭園美術館
2010年7月3日~9月5日

※詳細は
展覧会HPをご参照ください。

Teien01

アールデコの館、旧朝香宮邸。

Teien02

土曜日だったが、決して空いているわけではなかったものの、ほどほどの人数の観覧客。
だいたい一枚の絵をの前を1~2人程度で占めることができて、余裕をもって鑑賞できた。
このところ、ひどく混雑している美術展を観覧することが続き、せっかくの芸術作品を、ストレスを感じながら鑑賞することが多かった。
それに比べて、展示会場を含めてじっくりと鑑賞できて、作品世界に入り込みながら、有元の画業をたどることができて、大満足。


邸内に入ってすぐ、旧大広間の入り口近くに、有元の東京藝術大学卒業制作の連作『私にとってのピエロ・デラ・フランチェスカ』の一部が展示されている。
これらは全て大学の買い上げになった作品。
ヨーロッパ旅行中に、イタリアで目にしたフレスコ画に強いインパクトを受けて制作したという作品は、どこか宗教画を思わせる。

油絵具は重層されるが、フレスコ画は絵の具が縦に染み込む。
仏画からも学ぶことが多かったという有元は、日本の岩絵の具を思い出し、日本画のクラスにも出て、岩絵の具や箔の遣い方などを学び、自身の制作に生かしていったという。
この後の有元の方向性は、既に藝大時代に定まったということだろう。
自らの描きたいものと手法を早くに見つけた、という意味では、幸福だったと思うけれど、だからこそ、画業も私生活も順風満帆の時に病を得て、38歳の若さで亡くなったことが惜しまれてならない。
もっと、彼独特の世界を豊かに深く広げていった先を観たかったと思う。

続いて、彼の代表作のひとつ、『花降る日』。
この作品を観ることができるのも、楽しみにしていた。
有元作品の独特のマチエールは、画家が目指していた「風化」を表すための様々な工夫の賜物だ。
作品を間近で観ると、絵の具を幾重にも塗り重ねたり、それを掻きとったり、額縁に虫食いのような穴を開けたり。

有元の言葉を借りれば"時間そのものが喰いこんで"いったかのような質感や色合いなのだ。
すぐ近くで、じっくりと作品を鑑賞できたから、有元作品の真の姿、画家の思いを受け取ることがてきた。
ずっと観たかった『花降る日』と、絵を独占するようにして、じっくりと向き合って、そのマチエールを確認することができた。
実に贅沢。

いつの時代なのか、どこなのか、画面にいる人物は何をしているのか、彼らは何者なのか、性別はどちらなのか、そもそも性別なんてあるのか。
そういう疑問は、一枚ずつ作品と向き合ううちに、霧消してしまった。
舞台で何かを演じているようでもあり、脈絡のない夢幻を描いたようでもあり。
宗教画を思わせるような厳かな空気の作品もあるが、威圧感はない。
不思議なのだけれど、不安感はなく、ふわりとした温かみと浮遊感がある。
有元は、絵に原則として一人の人物しか登場させず、手足を明瞭に描かないようにして、関係性や物語性を排除したとのこと。
観る側に全てを委ねるために。



作品の不思議な浮遊感や、楽器、花、青空と雲などのモチーフが発する柔らかさとがあいまって、絵の前の時間の流れもゆっくりしているような気持ちになってくる。
幾つかの絵の前には、エッセイ等に記された有元自身の言葉が添えられていて、独特の世界に入っていく道標となる。

会場のアールデコの内装も楽しみつつ、有元ワールドにひたる。

まるで無言の舞台劇の一場面を観ているようでもある有元作品。
この洋館は、その舞台に相応しい。
作品と展示会場が一体となっいるように思えた。
作品の配置自体にも、鑑賞者が朝香宮邸と有元作品に入り込めるような工夫がしてあるように感じられた。
例えば、大広間から二階に上がる階段わきには、地下へ階段を降りて行人物が描かれた『テアトルの道』と、梯子に乗った人物が描かれた『厳格なカノン』。
絵の中と展示会場が続いているような、そんな気分を誘う展示の仕掛けだ。

アールデコの意匠で飾られた大小の部屋を、廊下や階段を通って辿っていくうちに、有元利夫の作品の世界に自分が入り込んでいくような、そんな心持ちになって、とても心地よかった。
作品や画家の持つ空気感と展示会場が、これほどマッチすることも稀ではないたろうか。

絵画のほかに、小さな彫刻や陶芸作品、そして有元が愛用していたというリコーダーも展示されていて、彼の創作活動の全貌に触れられる。


鑑賞の最後に、企画展グッズ売り場となっている中3階の小さな部屋へ。
ここでかかっていたBGMがとても素敵だった。
いつまでも聞いていたくなるような優しい調べ。
まさに「天空の音楽」だ。
自分の葬儀の時に流してほしいなぁ…などど、ちょっと縁起でもないことを思ってしまった。

「ロンド」と題するこの楽曲は、バロック音楽を愛していた有元さん自らが作曲したもの。
前掲の展覧会HPにある動画「有元利夫 その芸術と生涯」で聴けますので、ご興味のある方は、再生してみてくださいね。


この清らかで穏やかな楽曲は、それを生みだした有元の精神の清らかさや優しさ豊かさの証といえよう。
素晴らしい仕上がりのカタログとともに、この曲だけが週録されている(8回繰り返して収録されている)CDを購入。
ジャケットは、この曲と同タイルの「ロンド」。
この絵も、とっても素敵なのだ。

Rond

収穫の多い、とても素敵な展覧会だった。
 

鑑賞後は、庭園を散策。
……曇っていたが、湿気が多くて暑くて、足取りが重かった。
庭園側からみた美術館(旧朝香宮邸)。

Teien07

まるで、生温かいゼリーのような空気をかき分けるようにして庭園を周り、カフェレストランへ向かった。
(ランチ・レポは こちら )


正門近くの花壇では、蝶もランチ中でしたrestaurant 
Teien05

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コメント

mail朝っぱらから、おじゃましますcoldsweats01

美術展の記事だと、ついコメしたくなります。

私なんか有元利夫さんという方のお名前も知らなくて、美術鑑賞が好きとか言えませんが。。。sweat01

 私の好きな印象派の画家のような色彩です。でも平面的なタッチは日本画のようであり、雰囲気や構図はイラストレーションのように大胆で不思議な空間を創り出していますね。

 しかし、美冬さんの鑑賞眼は素晴らしいです。
私は「好き・嫌い」くらいの印象でボーッとして回るだけなので、美術展に行ってもこんなに書けませんcoldsweats01
 それから「生温かいゼリーのような空気をかき分けるようにして庭園を周り、」この表現どんぴしゃですgood
獣側から見た美術館や蝶の写真の構図もうまいなぁ。私は手ブレしまくりだしsweat02
↓の深大寺とともに東京めぐりの観光リストに入れちゃおうっと♪

 

アンさん

いらっしゃいませ♪
コメントありがとうございます。

そうなんです、有元さんの作品は、とても独創的ですね。
ちょっと不思議な世界です。
それが、会場の庭園美術館と良くマッチしていて、素敵な空間になっていました。

庭園美術館は、洋館自体が芸術作品でもありますし、庭園散策も(猛暑sunでさえなければ)気持ち良いので、機会がありましたら、ぜひぜひ~♪

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