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2010-10-01

上村松園展@東京国立近代美術館

大勢の美人さんに会ってきました。
眼福、眼福 lovely

上村松園展
東京国立近代美術館

会期
2010年9月7日(火)~10月17日(日)
会期中、一部の作品のを展示替あり。
前期:9月7日~9月26日
後期:9月28日~10月17日

Shoen01

約100点の傑作を集めた大回顧展。
これだけ規模の大きい松園の展覧会は、私は初めて。
画集や映像では、代表作を随分と観たことがあるが、実物は過去に幾つかの展覧会の中で、数点の松園作品を観たことがあるくらいなのだ。
「松園の傑作が堂々集結」と、展覧会HPに謳っているとおりの見事なラインナップだった。
松園芸術の素晴らしさを、間近でたっぷりと堪能できて大満足。
かなり入り込んで鑑賞してしまった。
従って、感想も長めです。sweat02



前期期間中に出かけたので、後期展示作品の『序の舞』(重要文化財)が観られなかったのが残念。
可憐でしとやかな姿の中に、強い意志を潜ませている凛とした女性の美しさを描いた松園の代表作だ。
時間ができれば、後期展示にも足を運びたいが…。
「序の舞」は過去に1回だけ観たことはあるけれど、可能ならば、また観たい。


ほぼ、制作年代順に展示してあって松園の画業がどのように広がり深まっていったかが、順番に鑑賞していけば、分かるように構成されている。
私のように知識が無くて、ただウットリと観ている人間でも、松園が好んだモチーフ(蛍、蝶、雪、傘 など)の使い方のバリエーションや、テーマの掘り下げ方の深化、と言ったことが自然と感じられた。
そして、初期から、完成度が高く、洗練された品格ある作品を描いていることに感嘆した。
初期から晩年まで、その画格の高さは変わらない。
やはり、松園は偉大なり。


間近でみると、松園美人たちの、ふとした仕草や微妙な目の表情、綺麗な生え際や襟足、精緻な着物の柄や質感の表現などなど、ため息がでるくらいに麗しく細密で、画面のどこにも一切の手抜きなく、隅々まで神経が行き届いているのがわかる。

端正で品が良いと同時に、生き生きと血が通っている松園美人。
とても女性らしいのだけれど、媚びたところは微塵も無い。
松園の描く女性の美しさは、官能美や媚態はではなくて、清らかで凛とした美しさとして表現されている。
松園自身が理想としていた女性像なのだろう。


そのような松園美人たちに囲まれて(?)いると、自分の生まれつきの容姿のことは諦めるとしても(涙)、彼女たちの、すっきり伸びた背筋と、たおやかな仕草には、「かくありたい」と、憧れる。
陶然と、美女達に見とれてしまった。
そんなふうに、松園芸術は、人物の洗練された美しさに目が奪われて、ただ見つめて憧れてしまうのだが、一点ずつを見つめていると、作品の持つ物語が立ち上がってくる。
人物の内面や場面の情景を、観るものに想像させて膨らませるように、というところまで計算に入れて描かれているのだ。
そして、計算や技巧を超えて、松園が描く対象の心情に寄り添って、心をこめていたからでもあろう。
だから、観るものを、そっと絵の物語に引き込む力が、作品にあるのだ。
そうなると、ますます絵の前から動きがたくなる。
従って、展示作品前には、自分を含めて動けずにいる鑑賞者が続出(笑)。
ただでさえ、軸物をガラスケース越しに鑑賞することが多いため、作品前が混みがちな日本画展。
これに加えての松園美人の誘引力。
どうしても行列が出来てしまうのは仕方ない。
私は、雨の日のお昼時を狙って出かけたので、部分的に混んでいる程度で鑑賞できて幸いだった。



展示作品のいずれも珠玉作だが、お気に入りの作品をピックアップ。
いやー、選ぶのが大変。(笑)


まずは、可憐さや華やかさの中にも、登場人物の心境が伝わるような一枚。

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  「舞支度」 1914年


祇園の芸妓・舞妓をモデルにして、デッサンを重ね、作品に仕上げる際には、京都のセレブなお嬢様達の踊りの発表会を舞台として設定したとのこと。
いかにも明るく華やいだ画面。
その中で、自分の出番を控えたお嬢さんのドキドキ感、後ろのお友達(?)のややリラックスした様子が、登場人物たちの表情やポーズから自然と伝わる。
松園らしいと私が思う一枚だ。


「虹を見る」(1932年)は、雨上がりの空に虹がかかっているのを見上げる女性達を描いた二曲一双の屏風。
本展覧会の関連webサイト「週刊 上村松園」第4週の【3章-2】にて画像をご覧いだける。(↓画面左側に展示してある作品。)
http://shoen.exhn.jp/special/interview/reiko_nakamura.html

背景は無くて、虹が向かって右側の一双の右上に、ごく淡く描かれているのが肝だ。
赤子を抱いた若いお母さんと、縁側で夕涼みをする粋な姐さん。
それぞれの、虹を見上げる表情とポーズが絶妙だ。


こうした作品と別の世界として、古典から題材を得た作品では、静かな中に女の強さと儚さ、濃い情念が表されている作品もあり、観ているとドキドキしてしまう。

前期の目玉の一つ、「焔」 (1918年)。

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能「葵上」の、嫉妬の暗い焔に身を焦がし、生霊となった六条御息所の姿。
まさに、鬼気迫る女の情念のすさまじさ。
この世のものならぬ気配が充満している。
息を呑んで観ていたら、若いお父さんに連れられた幼稚園くらいのお嬢さんか「パパー、この人怖い~」とひきつった声で訴えて、パパの袖を掴んでいた。
パパは「怖いね…。でも良く観てごらん。」と言いつつ、腰が引けていた。(笑)

表情や着物の蜘蛛の巣柄にはもちろんゾクッとするが、長い黒髪の存在感が凄いと思った。
ここで引き合いに出すのはどうかと思うが、映画『リング』の貞子の怖さは、長い黒髪によるところが大きい気がする。
あれが金髪のモヒカンだったら、そんなに怖くないんじゃないかしら。(妙な例えですみません…)
静かに嫉妬する高貴な黒髪の美女……怖ろしくて、哀しい。


もう一枚、恋のために心を遠くへ飛ばしてしまった女の絵。
「花がたみ」は、謡曲「花筐(はながたみ)」から題材を得た作品。
寵愛を受けた皇子が登極したため離れ離れになってしまい、恋しさのあまり心を病んでしまった女「照日の前」。
多数のデッサンが共に展示されていて、これがとても興味深かった。
モデルの表情を写し取っているところから始まり、試行錯誤を重ねながら素描を繰り返していくうちに、次第に表情から生々しさが消え、ポーズや小道具も変化していく。
完成作では、感情のメーターが振り切れてしまって、心が真っ白になってしまったことを表すような表情になっている。
目元口元に薄く笑みを刷いているが、そこには静かな狂気がある。
こちらには、怖さや凄みは感じられず、ただ哀しい。

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 「花がたみ」  1915年


最後に、かなりツボだった作品。
ふとした日常に見られる女性の美を、慈愛のこもったまなざしで格調高く描くのも松園芸術の真髄。

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  「晩秋」 1943年

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  「夕暮」  1941年
   
二枚とも、色数を抑えて、すっきり落ち着いた画面。
無地や渋い色の着物に昼夜帯という慎ましいが品の良い衣装。

市井の女性が送る何気ない日々の情景。
そのなかの、ふとした瞬間に在る美しさ。
無条件にグッとくる。
しかし…。
慎ましい日常風景ではあるが、生活の疲れ、というものは無い。
生き生きしているが、あからさまでない、というギリギリのところまで生々しさを削いでいるのが、松園の凄いところなのだと思う。


「晩秋」は、障子のつくろいをする女性、「夕暮」は軒先で夕日を頼りに針に糸を通そうとしている女性。
観ていると、心がじわーっと暖かくなり、次いで目頭が熱くなってしまった。
こういう情景を目にしたことがあるわけではないのに、不思議と懐かしいような気がした。
いずれも、松園が幼い日の母の姿の記憶を辿って描いた作品だそうだ。
私も、「日本の母」に反応して、じーんと来たのかもしれない。

このほかにも、松園には、「ザ・日本の凛とした美しい母!」というべき作品が多くある。
最愛の母を失ってからは、母への思慕を込めた作品が多い。

厳然たる男女差別や女性蔑視のあった時代、女性画家、シングルマザー、という険しい道を選択した松園を支えたのは、母だった。
いつでも、母が盾となって松園を守り、最大の理解者だった。
最愛の母の凛とした強さと美しさが、松園の描く女性達に投影されているのだろう。

実に充実した内容の展覧会だったと思う。

展示の素晴らしさだけでなく、WEB展開も一味違う。
前述した「週刊 上村松園」が秀逸。
私は特に、辛酸なめ子さんによる「をんな絵師」全4回がお気に入り。
彼女らしいユニークな視点で、松園の側面に斬り込んでいる感じで、面白い。
是非、ご照覧くださいませ。


「週刊 上村松園」

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