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2011-01-14

『作家のおやつ』

先日、埼玉県立近代美術館にて『植田正治写真展』を鑑賞した後、ミュージアムショップに立ち寄った。
こちらのショップは、企画展グッズ以外にも、可愛い物や楽しいものをセレクトして置いているので、いつもじっくりと検分してしまう。

殺人的に混雑している大展覧会のグッズ売り場では決してできないことだが、詳しく見る前に、ぐるっと一回り。
…といっても、ショップがとても小さいので、一瞬で回れる。
すると、企画展関連書籍コーナーに平積みされていた本の表紙に、私の目は釘付けになった。


作家のおやつ
 (コロナ・ブックス)
 平凡社 刊

Oyatsu_5


お  や  つ

それは、いかなる時も私の心をときめかせる、魅惑の三文字。

そして、表紙の写真が…。
これまた私の胸を高鳴らせるホットケーキ!
作家×おやつのホットケーキといえば、もちろん、池波正太郎×万惣フルーツパーラーのホットケーキに決まってるでしょ。
池波ファンなら、即わかるもんねっ、むふふ~。
と、口元を緩めながら、本を手に取り、しばし舐めるように表紙のホットケーキを見つめた後、お目当てのページを探し出して自分の推測が当たっていたことを確認してニヤニヤしていた私は、かなりの危険人物のように見えていただろう。

パラパラとぺ゛ージをめくると、様々な作家のお気に入りのおやつや、作品中に登場するおやつが、家族や親交のあった人たちが綴るエピソードなどを添えて、豊富なカラー写真と共に紹介されている。
取り上げられているおやつは、お店で売られている和洋菓子や郷土菓子ばかりでなく、自家製のお菓子や果物、たこ焼などなど、多種多様。

川端康成、三島由紀夫、手塚治虫、久世光彦、植草甚一、小津安二郎、吉屋信子、森茉莉……そうそうたるクリエイターの名が、ずらりと並び、この方々のおやつタイムに興味深深。

十代前半から現在に至るまで、特に食に関するエッセイを読んできた作家が何人も含まれているのを見て、更に興味が深まる私。
池波正太郎、獅子文六、向田邦子、沢村貞子、内田百聞、開高健、荻昌弘……。
そう、中学生の頃から、オヤジが好むようなテーマのエッセイを読んでいたのだ。
オヤジスキーで、自分の中身もオヤジとは、どういう精神構造なのか。
我ながら理解不能だ。(笑)



行きつ戻りつ、ページをめくっていると、植田正治さんの名があった。
……ああそうか、それでここに置いてあるのか。
当然だよねえ。
おやつに目がくらんでいた私は、この本がここにある理由など何も考えずに、各ページのおやつの写真に没頭していたのである。
やれやれ…。


ということで、隣に置いてあった同じシリーズで、おなじく植田さんを取り上げていた『作家の家』とあわせて、お買い上げ~。
(ちなみに、『作家の家』も、とても面白かった。)





帰りの電車の中で、さっそく本を広げて、眼と頭で楽しむ擬似おやつタイム。(笑)
ミュージアムショップでは失念していたが、そもそも発行はいつなのかと奥付を確認したら、2009年1月発行ですと。
あらー、全然知らなかった。
私の大好物なテーマの本なのに。
この2~3年は、本当に仕事以外で活字を読めなくなってしまったので、書店で新刊チェックすることも少なくなったしなあ。
展覧会に行ったおかげで、楽しい本と出会えたということだね。
これも植田正治さんのおかげ…かな?


さて、植田さん好みのおやつは、ホームメイドケーキと、自家製の柚子ピール。
美しいもの、美味しいものを愛する夫のための、奥様お手製のおやつだ。
ご自分の作風とアマチュアリズムを貫きながら、生まれ故郷で生涯を過ごされた植田さんらしさが滲むおやつなのだ。
また、私も大好きな両口屋是清の「二人静」も植田さんのお気に入りだったと知り、ちょっと嬉しくなった。
えへへ……ミーハーです。

 
らしいと言えば、例えば、連日の徹夜のエネルギー源は大好きなチョコレートだったという手塚治虫。
逆に、意外だったのは、最初に登場する三島由紀夫。
本文中にもあったのだけれど、三島とおやつって、なんだかミスマッチな感じだという先入観があったのだ。
おやつタイムでほっこり…なんて、およそ三島由紀夫のイメージとそぐわない。
(勝手なイメージですよ。)
三島の場合、執筆の合間に邪魔にならないものを口に運ぶという感じだったらしい。

このように、おやつを通して、その作家のライフスタイルや意外な一面や、仕事の流儀みたいなものが、じんわりと伝わるような楽しい本だ。   

掲載されている写真の色調やスタイリングは、レトロな感じにしてある。
『暮らしの手帖』の写真みたい…と言ってわかる方、いらっしゃるかしら。
イマドキの雑誌やムックなどで見るようなスイーツの写真とはちょっと違う方向性だ。
あえて、レトロ調にしてあるのは、本のテーマに沿ってのことだろう。
作家達がおやつを楽しんでいた時間に自分も遡っているような感覚になるのだ。

巻末に、紹介されているお菓子の販売店や、作家ゆかりの記念館などのリスト付。
気になったおやつを買い求めたり、記念館や文学館で作家の世界に触れるのに役立ちそう。


暖かくなったら、散歩がてら、素敵なおやつを買いに行く気満々。(笑)

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コメント

>作家×おやつのホットケーキといえば、もちろん、池波正太郎×万惣フルーツパーラーのホットケーキに決まってるでしょ。

あなたはわたしなんだ。(お約束)
池波正太郎は「鬼平犯科帳」も読んだし「剣客商売」も読んだけど、入り口は「食卓の情景」でした。
最初の写真でノックアウトされて、以後は同作家の食べ物系のエッセイを読みまくり、最後に上記の二シリーズへたどり着いたという邪道ぶり。
ただ、今でも写真や文章で美味しいものを見たり読んだりするのは大好きなんだけど、実際に並んだり取り寄せたりして食べようとは思わないんですよねぇ。全く食いしん坊ではないです。(超が付く面倒くさがりのせいかも。でも万惣のホットケーキはいつか食べてみたい♪)
自分のこの習性は、新美南吉の「牛をつないだ椿の木」で開花したような気がします。その証拠に(?)、茶屋のお菓子の描写は覚えているのに、話の筋や結末はさっぱり覚えておりませぬ。(とほほ)

「作家のおやつ」は最寄の図書館に検索してみたらあったので、今度借りてこようと思います。
楽しい情報をありがとうございました。

suikaさん


いらっしゃいませ♪
コメントありがとうございます。

『作家のおやつ』は、広く浅くという感じで軽く楽しめるので、おすすめです♪


>>あなたはわたしなんだ。(お約束)

きゃっ、嬉しいです!
私も、池波作品は食のエッセイから入りました。
ええ、私も邪道です。(笑)
確か、『散歩のとき何か食べたくなって』が最初でした。
それから、『食卓の情景』や『銀座日記』などのエッセイを読破し、その後に『鬼平犯科帳』、『剣客商売』、『仕掛け人 藤枝梅安』の三大シリーズをコンプリートしまして、後は、ぼちぼちと…。
池波さんは本当に食に対して貪欲な方なので、作中の食事の描写も本当に食欲を誘うというか、想像力をかきたてるんですよね。


>>自分のこの習性は、新美南吉の「牛をつないだ椿の木」で開花したような気がします。


私の場合はsuikaさんのように、想像の世界だけで満足というわけには行かず、実際の行動に移してしまうので、体重が右肩上がりで増加するという問題が生じております。

新美南吉というと、私は『ごんぎつね』の印象が強いです。
幼児の頃、毎日の昼寝の前に母が絵本を読んでくれたのですが、『ごんぎつね』の時は、読んでいる母が決まってラストで泣いてしまって、仕方なく娘(私)が母を慰めて、そうすると母が更に泣いてしまい、もう昼寝どころじゃなかったです。(笑)
この人の作品は、切ないですねえ。
『牛をつないだ椿の木』も良い話でしたね…確か。(超弱気)
実は私も、ストーリーは、「主人公の牛が椿を食べてしまう→井戸を掘る」までしか覚えてません。
でも、茶店で駄菓子をつまむ場面は、記憶に残っています。
金平糖を掴んで、ぽいっと口に放り込んだりするのは、やってみたいと思ってました。
記憶力減退がひどいのに、こういうことは覚えているってのは、どういうことでしょうか。(汗)

私は、お昼寝タイムに母に読んでもらう時のリクエストNo.1だった『ちびくろさんぼ』で、食に関する文章への関心が目覚めたと思います。
トラがぐるぐる回ってバターになって、それで沢山ホットケーキを作って食べるとういう超シュールなオチ(?)が大好きでした。
やっぱり、あらすじは覚えてないんですけど。(笑)
これでホットケーキが大好物になったんだと思います。
まさに、三つ子の魂百まで?

こんばんは 美冬さま

まあ、まあ、私も池上さんへのご縁は「散歩のとき何か食べたくなって」
でした。なんか題名にひかれて内容にやられてしまいました。

当時はまだ未成年でしたので池上さんのような「大人の男」の
楽しみは挑戦できずに同じく渋好みの友人と一緒に精一杯背伸びをして行けたのが
「万惣フルーツパーラー」と「資生堂パーラー」でした。

どちらもとてもキレイで落ち着いた空間で「大人」の世界を垣間見たような気が
したようにおもいますね。懐かしいです。
その後その友人と成人式の後に絶対にお茶の水の「山の上ホテル」へ行って
てんぷらを食べて日本酒を飲もうと約束して実行しましたっけね~。
どちらも懐かしい思い出です。
あっ!でも「電気ブラン」は未挑戦です。私が致命的な下戸だというのが
山の上ホテルでわかったので(なんと食べ終わった食事をきれいさっぱり
リバースしてしまったのでした、トホホ…おかげでどんなメニューだったか
全くおぼえていません)


その後もついつい食べ物関係のエッセイはどうも素通り出来ないでいますね。

あと私がつい買ってしまうのは作家さんだけでなく「書斎」や「本棚」関係の
本ですね。なんとなくどんな本が並んでいるんだろうと野次馬根性丸出しで
ガン見してしまいます。ブランチなんかでもついつい…。

むぎこがしさん

いらっしゃいませ♪
コメントありがとうございます。


まあ、お仲間ですね~嬉しいです。happy01

池波正太郎の食エッセイの魅力は、「大人になったら、ここでこれをいただきたい」という気持ちにさせられるお店が登場するところにもありますよね。
成人式の後に、山の上ホテルで天ぷらですか。
渋い! そして贅沢ですね。羨ましい~。
酔ったことも含めて思い出になりましたね。

私は、まだ山の上ホテルの天ぷらはミッドタウンの支店でランチをいただいたことがあるだけなのです。
いずれ、泊りがけで行きたいと思っているうちに時間が経つばかりで…。
今年こそ、泊りに行きたいですが…どうなるかしら。


クリエイターたちの書斎や本棚は、確かに気になりますよね。
私も、書斎や仕事場でインタビューされている方の背後に目が行きます。
自分の頭の中身を観られるようだと、本棚を撮影されるのを嫌がる方もいらっしゃる、というのもうなずけます。

こんばんは 美冬さま
ちょっと書き方が悪かったようですね。(汗!)
山の上ホテルに行ったのは
成人式の当日ではなく、成人式が終わった次の土曜日の夜でした。
当日は私はスーツだったのですが、友人は振袖を着る予定だった
ので別な日にしたんです。両親ともお酒を飲まないので家庭内飲酒の
習慣が全くなかったのとあまりそういった席(どういう?)でも
成人まではと真面目に(エッ?)アルコールをとらなかったので本当に
分からなかったんですよね。
でも今考えても初飲酒を外でなんて無謀でした。

懲りずに何回かチャレンジしましたがお酒は鍛えればウンヌンというのは
全くの迷信だということです。ワインをたしなみながらといいう美冬さまが
とってもうらやましいです。だから夜のデューデリは私にとっては
と~ってもハードルが高いんですよね。でも雰囲気は味わいたいな~と
思ってますが。


むぎこがしさん

毎度ありがとうございます♪

>>成人式の当日ではなく

そうでしたか!
すっかり勘違いしてましたので、私の頭の中では、振袖のお嬢さんたちがカウンターで盃を片手に天ぷらを召しあがるの図…になっておりましたよ。(笑)
いずれにせよ、豪勢なお祝いですね。

私、お酒は好きなほうですが、弱いので、すぐに眠くなってしまうのです。
なので、自宅で飲むのは良いのですが、外ではたしなむ程度ですのよ~おほほ。

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