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2011-06-19

映画『手塚治虫のブッダ~赤い砂漠ょ! 美しく』

映画『手塚治虫のブッダ』を、公開から3週間経って、ようやく鑑賞。


東京国立博物館で開催中の『手塚治虫のブッダ展』が期待以上に良い内容だったので、映画も期待して……と言いたいが、5月連休明けから切れ目なく週末が忙しくなってしまい、出遅れてしまった。

観終わってのざっくり感想は、
「チャプラが主人公だよね!?」
「堺雅人さん、やはり上手い!プロの上手い声優さんと同レベルだ!」
という2点。
堺さんはアニメの声のお仕事のキャリアも十分なので、観る前から不安はゼロだったが、いやー、改めて、この方は上手いと思った。
声優のお仕事は、映像や演劇と違う技量とセンスが要求されることもあり、残酷なくらいにレベルを露呈してしまう。
なので、声とイメージが合わないキャストや声の演技が素人くさいキャストが目立ってしまいがちで、観ていてそこにひっかかって集中できなくなる。
残念ながら、本作もそういうパートが少なからずあった。
が、堺さん演じるチャプラと、母役の吉永さんのパートは、プロの声優さんと同じく安心して物語に入り込めた。


さて、全体の感想には、微量ネタバレも含むので、念のため折りたたんでおく。
(大したことは書いてない。)

なお、先に書いておくが、原作は未読なので、原作と比べての感想記述はない。
どちらかというと、肯定的でない表現が多くなっているので、その点をお含みおきの上、大丈夫な方は、先へどうぞ。

なるべく、ストーリーに触れないように、ふんわり書いておきます。
また、色々とツッコミどころはあるが、野暮なことは言わずにおいといて。


全体的に、ちょっと中途半端で残念。
三部作の第一部で、シッタールダの誕生から出家を決意するまでの物語であって、ブッダの生涯の導入部であるということを差し引いて考えても、どこに力点を置いて描いているのかわかりづらく、全体に薄味に感じてしまった。
登場人物が多くて、それぞれが重みのあるキャラクターなのだと思うが、時間的な制約のせいか、それぞれのエピソードや、掘り下げるべき(と思われる)人物の描き方が物足りなく薄く感じてしまった。
なので、シッタールダの家族を始めとする彼を取り巻く人々の行動の動機や思いが薄まってしまい、よってシッタールダの苦悩の深まりが、ちょっと唐突にも思われた。
ミゲーラとのエピソードは、ベタでも切なく痛ましくて、シッタールダの哀しみが十分に伝わったのだけれど、その後の葛藤や虚無感みたいなものが、説明台詞で語られるだけだったような。

また、戦場でシッタールダと接近遭遇した際にチャプラがシッタールダのオーラを感じての独白とか、その時の映像表現とかは、すっかりチャプラ派になっいる私には、納得できず。(笑)
シッタールダのオーラに負けたわけじゃないけど、なんだかなあ。
(贔屓しすぎ?)
原作どおりなのかもしれないけど、うーーん……。

2時間程度では、手塚治虫さんが伝えたかった濃く重いメッセージが十分に描ききれないのだろうな。
今の日本だからこそ、尚更に、もっとじっくりと描いて欲しかった。
とはいえ、テレビで何回かにわけて…というのも難しいだろうし。
このあたりも、勿体ないような歯がゆいような。


シッタールダと対比して描かれる、もう一人の主人公チャプラと、特殊能力を持つ少年タッタは、とても魅力的。
タッタは、続編での更なる活躍があるはず。
そして、本作の主人公(断言)チャプラは、もっと彼の登場シーンが観たかったのに…と思わされた。
人々を苦しみから救いたいと悩みつづけながらも、何もできないことに怩たる思いを抱き続けているシッタールダと違って、ただ一つの目的のためにだけに、疑問や不安を封じて成り上がっていくチャプラ。
出自を偽って成り上がるといえば、『ハゲタカ』の劉一華を思い出してしまう私のような人は他にいないと思う。(爆)
チャプラは、明確な望みと目的を持って出自を偽りつつも、決して自分のルーツを忘れず母への愛を貫くのだから、最初から最後まで自分を持ち続けていて、劉のようにアイデンティティをさがし続け、誰かに自分をトレースしようとして瓦解した人ではない。
チャプラは運命や社会制度に逆らおうとしてかなわなかった悲しい人だが、決して脆くなく強く生きたと思う。
こんなふうにキャラクターについて考えたくなるのも、演じる堺さんのチャプラへの同化ぶりが自然で、「堺雅人が演じてまっせ」感がなくて、チャプラに感情移入できたから。
青年チャプラが登場した瞬間だけは、キャラデザインと堺さんの乾いたセクスィーヴォイスにギャップがあったが、すぐになじんでしまった。
格闘・戦闘シーンのチャプラの雄たけび(?)は、ドラマや映画の堺さんの役柄では決して味わえないワイルド&セクスィーさで(←失礼すぎる)、「きゃーっチャプラ様~!」となる萌えポイント高し。(笑)


タイトルロールであるブッダを演じる吉岡さんは、さすがに雰囲気も深みもあるし、苦悩する青年にピッタリなのだが、キャラデザインと声の雰囲気が合わないように感じて、少し気の毒だったかも。(私の主観ですので、お許しを。)

また、前述のとおり、プロの声優さん以外の一部の方々の登場シーンでは、悪目立ちしてしまうところが多くあり、これも勿体ない。
いや、シロウトらしさか良く作用するケースもある。
その人の魅力を良く分かって起用して、味を活かす演出がされていれば、素晴らしくなる。
例えば、トトロでの糸井重里さんのお父さんは余人をもって代えがたい素晴らしさだったしね。
スポンサーのしがらみとか諸事情もあるだろうし、話題性のためもあるんだろうけど、物語やキャラクターへの感情移入を阻害するような無理なキャスティングは、「手塚治虫の」という冠が泣くのでは。


それから、キャスト陣で特筆すべきは、ナレーションとチャプラの母役の吉永小百合さん。
さすがに声のお芝居も品格高く美しく、母の無償の愛を表現しておられた。
が、絵的には、「母さん」がいつまでも若すぎて、青年チャプラとの再会シーンは、どうみても恋人同士に観えて仕方なかった。
私の眼がよこれているからかしら…。
そんなこともあり、チャプラと母のシーンは、(年齢設定より大人すぎだけど)実写で堺さんと吉永さんで観たいと思ったりして。


ということで、良い面も多々あるけれど、それだけに残念ポイントが印象に残ってしまい、勿体ない。
続編は、どうしようかしら。

全ての人に平等に老いも死も訪れるのに、どうして皆が平等に幸せに生きられないのか。
どうして思い通りに生きられず、苦しむのか。
その苦しさから脱するにはどうしたらいいのか。
そんな疑問と悩みを抱え続けるシッタールダが、厳しい修行を経て、目覚めた人=ブッダとなるまでを、2部と3部でどう描くか、先が気になる。
だが、正直、チャプラがいないなら、というか、堺雅人のチャプラの声を映画館のサウンドシステムで聞けないなら、行く意欲がかなーり低くなりそう。
そういう適当な人間をも引きよせるような素晴らしい続編を期待している。

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コメント

こんにちは 美冬さん

ハイッ!お約束の
「おれはあんただ」(by劉一華)

なんかね少し期待していた分がっかり感がハンパじゃなかった
というところですね。

実は私も原作の手塚先生の「ブッダ」は読んでいないのですが
昨日偶然コンビニで「ブッダ」のダイジェスト版みたいなモノで
出家する少し前からのお話しが載っていたのと巻末に
「聖☆おにいさん」の作者の中村光さんのインタビューが
掲載されていたので迷わず買ってしまったのでした。

いやー笑いましたよ、スゴいです、中村先生!
なんと先生のお部屋には「ご神体」として白黒のアトム像を
飾ってあるとか、マンガ喫茶で手塚先生の「ブッダ」を
読んで感動して手塚先生の信者になるエピソードにこめた
思いとかヒジョーに面白かったです。

もちろん手塚先生の原作・ブッダもご当人のブッダ(中村光版のブッダ)
を取り込んでしまうほどの魅力はあったと思いますけど…

正直、あと2作を劇場に足を運んでまで観るかどうか微妙ですね。

あ、以前の記事で美冬さんの阿部ちゃんと向井くんが競演というのを
私の中では「初競演」とかおもっちょりましたが「新参者」で既に
競演済だったのを忘れてしまっていました。あの作品ではちょっと
向井くんの存在感薄かったからなーと言い訳したりして。


むぎこがしさん

いらっしゃいませ♪
コメントありがとう゛ざいます。


うーーん、そうなんですよね、期待していたので、少し散漫な印象がして勿体なく感じてしまいました。
シッタルーダの人物像や彼の悩みの掘り下げが重要なので、それをわかりやすくするために手塚先生がチャプラを創作したわけですが、せっかくチャプラが魅力的に描けたのに映画ではシッタールダが薄くなっちゃった感じですね。


>>「新参者」で既に競演済だったのを忘れてしまっていました。


あ、そういえばそうでした…。
って、私も忘れてました。(汗)
私は向井氏への愛が無いので仕方ないですかね。(すみません。)
まあ、『新参者』は毎回豪華ゲストが出ていたし、メイサさんのほうが目立っていましたしねえ……なんて言い訳しちゃったりして。

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