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2013-02-26

日本橋三越の天女像

日本橋三越本店。

「やあ、久しぶり。」
威風堂々たるライオン像が出迎えてくれた。

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私が子供の頃、母が進物を調える時には日本橋の高島屋か三越かどちらかに出かけていた。
小学校高学年までは、たいてい、買い物の邪魔になるので私は父や弟ととお留守番だったけれど、年に何回かは私もお伴させてもらえた。
そういうときは、ちょっとおめかしさせてもらえた。
幼稚園から小学校低学年ごろは、ワンピースに共布のボレロ、リボンのついた黒い靴、白いベレー帽もかぶっちゃって、手にはお気に入りの藤の小さなかごバッグを提げて、ウキウキして出かけたのを覚えている。
誕生日の時期だと、綺麗なハンカチとか子供用の小さな手提げバッグとかリカちゃんの可愛いワンピースなどを買ってもらえてテンションMAXだったなあ。
嬉しすぎて、帰宅するなり発熱したこともあったくらいだ。
イベント月でない場合も、大食堂でお子様ランチやプリンアラモードを御馳走してもらえて、幼いころから食いしん坊だった私は、とってもとっても嬉しかった。

私は、高島屋のクラシックなエレベーターや、優雅なエレベーターガールに魅せられていたけれど(弊ブログ 2009年10月12日の記事で言及)、エンタメ好きの母は、大ホールでのパイプオルガン演奏などがある三越のほうが贔屓だったらしい。

昔のデパートは、単なるショッピングセンターではなくて、「おでかけ」する特別な場所、ハレの場所だったのよ。

あれからウン十年。
日本橋三越本店の華麗なエントランスホールに足を踏み入れると、今でも、そして、いつだって、「わあ~♪」と声を漏らしてしまう。
立ち止まって、重厚な大理石の階段や高い吹き抜けをうっとりと眺めていると、幼かった自分のワクワクした気分が胸の中で立ち上がり膨らんでくるのを感じるのだ。
これもアンチエイジングの一種…ということにしておこうかしらね。(笑)


この大ホールにそびえたつ壮麗で巨大な像。

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目の当たりにするたび、その大きさと、うねるような生命力あふれる造形に圧倒されてしまう。
三越の依頼を受け、佐藤玄々が製作した「天女像」だ。
なんと製作に10年もかけたという大作。
(詳細は ⇒ こちら )

こんなに大きいのよ~~!

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階段をのぼりながら、後ろをじっくりと鑑賞した。
これだけ壮大なのに、実に繊細に緻密に細工されていて、惚れ惚れした。
以前 『美の巨人たち』で取り上げられたのを見て、作者・佐藤玄々の並々ならぬ情熱に打たれ、「次に機会があれば、是非つぶさに鑑賞しよう。」と心に決めていた。

斜め後方から見上げると、鯱鉾みたいな形状かも??

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この像が完成し、日本橋三越でお披露目されたのは昭和35年のことだ。
これだけのものを発注した三越もすごいが、決して妥協せずに十年の歳月をかけてこの傑作を作り上げた佐藤玄々の職人気質と高い美意識に感服。
久々に観て、改めて度肝を抜かれましたぞ。

2012-09-24

「まさひこ」が「鍋島」に挑んだ@サントリー美術館

先週、『最強のふたり』を観て以来、頭の中でいつもEW&Fの楽曲が流れていて、心はファンキー、でも体はヨボヨボな私です。(泣)
映画を3本立て続けに観て、いずれも「もう一回みたいなー。」と思っているというのに(ちなみに、『るろうに剣心』、『最強のふたり』、『鍵泥棒のメソッド』の3作品。)、なーぜーか、こんな記事を書いてしまいました。

記事を書いている本人にしか意味が通じないような記事タイトルで申し訳ない。
あ、それから…「まさひこが挑む相手は「鍋島」でなくて「飯島」だろ、ヲイ!」と突っ込んだあなた。
そんなあなたは、私と同じ「病」の可能性があります。(爆)

いちおう、タイトルの意味は最後にわかるかも?


サントリー美術館の展覧会を鑑賞&体験した時のざっくりレポ。
なんせ、9月2日までで会期終了してしまった展覧会なので、相当に無意味ではあるが…。


おもしろびじゅつワンダーランド
 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2012_04/index.html

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かなりおバカなことをしでかしたので、記事を載せようかどうしようか迷ってい

るうちに時間が経過してしまったのだけれど、これだけ時間が経過すると、「せっかくだから(?)自分の行動記録としてアップしちまえ!」というファンキーな(?)ノリになってきたんである。


まずは、展覧会の模様を。
看板でもおわかりのとおり、夏休みの体験型企画展。
子供向けだが、大人も相当に楽しめた。
こういう企画でも、美術館のセンスや力がわかると思う。
いやー。流石にサントリー美術館。

会場内は写真撮影OKだったので、展示を楽しみつつ、写真も撮りまくり。
ただし、夏休み中だったので、お子さんが沢山来場していて、人がいないところで撮る、といことが難しかった。

まずは、「模様のプラネタリウム」。
展示室に入り、係員さんの説明を受けてしばし天井を凝視。
すると、こんな模様が投影される。

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これは、ここを抜けた正面に展示されている鎌倉時代の「浮線綾螺蒔絵手箱」の内側の模様。

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つまり、箱の中に入っている感覚を疑似体験できるってわけ。
この導入部で、ワクワク。


続いて、「ススキ林のアプローチ」

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この曲がりくねった小道を歩いてススキ越しに「武蔵野図屏風」に近づいて行きながら屏風を見ると、自分が屏風のススキ野原に入っているような気分になって、シンプルだけど面白い仕掛け。



この先は、「和ガラスの藍色ドーム」。
サントリー美の人気所蔵品である美しい和ガラスたちを、サントリー美ならではの高いレベルの照明の力で時に気品高く、時に幻想的に魅せてくれた。
いくら観ていても飽きない和ガラスにうっとり。

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この後の、洛中洛外図をタッチパネルで詳しく楽しく鑑賞できる「京都街中タッチパネル」。
かなり面白かったのだが、人気の展示で人がいない場所がなくて、こんな写真しかない。

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タッチすると、その部分が拡大され、場所の名前も表示されて、京都のガイドマップとしての洛中洛外図が体感できる。
隅から隅までタッチしてみたかったなあ。
ちなみに、下は本物の屏風のほう。
タッチパネルに夢中な人ばかりで、この本物を鑑賞している人が(私が鑑賞している時は)誰もいなかった。あれれ?(笑)
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後半の3階は、更に体験型展示が中心。
なんと!顔はめパネルとか、影絵になって遊ぼう!なんて展示があったが、ちょっとオバサンは恥ずかしくててスルー。
続いて、こんな展示。

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こりゃなんだ?
と思ったら、この茶碗に入って茶碗の見立ての世界を感じてみましょう、ということらしい。
靴を脱いで座れるようになっているのだけれど、これまた大人には恥ずかしい感じで、外から観るだけ。(小心者)

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赤楽茶碗  銘「熟柿」
うーーーん、昔の茶人の想像力(というか妄想力?)は素晴らしい。
私には柿には見えないなー。



さて、ここからが本題。
最終章「マルの中のクールデザイン鍋島」では、クールでモダンで品格高い鍋島の絵付けを自分もヴァーチャルで体験できる!という楽しいコーナーがあり、大盛況。

タブレット端末がたくさん並んでいて、これに表示される皿に色や鍋島の代表的モチーフを選んで載せていき、オリジナルの皿をデザインしましょ、というわけ。
これがまあ、すこぶる楽しい。
ハマりました。(笑)

下は隣の人(家人)の製作中の画面。

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最後に指で文字を書いてサインも出来る。
で、完成品はどんどん壁の大スクリーンに映されていくのだ。

で、こんなことしちゃったのさ。

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サインできる時間は一瞬なので、慌てつつ迷いつつ(笑)書いたのでミミズがはったような字になってしまった。(←言い訳)
デザインも、私のセンスの無さが丸出しだ。とほほ。

鷲津はこんな遊びしないとわかっちゃいるが、あまりにもこの夏が暑くて、そして、あまりにも鷲津欠乏症が酷いので、こんな小学校低学年レベルなことをしてしまったのである。(←また言い訳)

ま、これも私の夏の思い出ってことで、記事に載せちまいました。

しかし、なんだろうねえ、「たけちゃん」作の「全部盛り」的なデザインは……。
「まさひこ」になりすました私の皿のデザインもヒドいが。
とにかく、お目汚し失礼しました。

2012-07-16

マウリッツハイス美術館展@東京都美術館 をざっくり&邪道に鑑賞

平日に休みが取れたので上野に出かけてきた。
朝から暑い中、上野公園の中はいつも通りに人でいっぱい。
パンダの赤ちゃんが残念なことになる前だったので、お母さんと手をつないで元気よく歩いている幼稚園くらいの女の子が、「パンダに赤ちゃん生まれたんだよ!」と嬉しそうに通り過ぎる誰にでも話しかけているのが微笑ましかった。
あの子、どれだけ落胆してしてしまったんだろう…。

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これは、上野公園内某所で見かけたパンダ母子。
上野動物園で、こんな光景が観られる日が来るといいね。

前置きが長くなったが、目的はこちら。

マウリッツハイス美術館展

 
東京都美術館
 2012年6月30日~9月17日

http://www.asahi.com/mauritshuis2012/
 

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人気の展覧会に共通することだが、平日の夕方以降が狙い目とのこと。  (※混雑状況は上掲の公式HPトップをどうぞ。)
私もそのつもりでいたのだけれど、急遽、平日に休みがとれたので行列覚悟で行って来た。
9時30分の開場時間を過ぎてしまい、10時少し前に到着。
美術館入口には「待ち時間 10分」の掲示が。
うーん、10分て、入場まで10分間並ぶってことかな??


リニューアル後に東京都美術館に来るのは初めて。
建物の地下ロビー階には屋外エスカレーターで降りられるようになっていた。
美術ファンには(自分を含め)高齢者が多いので、これは嬉しい。
ここまでは、他の入館者の数も少なく、「あら、意外と混んでないかも?」なんて思っていた。
チケットは事前に購入してあったので、係員の誘導に従ってサクッと会場入口方面へ。
すると、ロビーに長蛇の列が出現!
米国ネズミがいる千葉のテーマパーク(←夢の無い表現ですみません)よろしく、ジグザグとテープが張り巡らされ、その中を粛々と4例になって進む。
周囲は圧倒的に中高年女性が多い。
そして、周囲の皆さんのおしゃべりが自然と耳に入ってくる。
目玉作品『真珠の耳飾りの少女』を現地で鑑賞したことがある方が多いらしく、「私が行ったのは○年前でぇ~」とか「あのときは空いて良かったわ~」という声が前後左右から聞こえてきた。
私の前にいらした杖をついたご高齢の女性は、「死ぬ前にもう一度、本物を観ておきたくて無理をして来てしまった。」というようなことを、付き添いの方に話していらした。
ううーむ、フェルメールの、そして真珠の耳飾りの少女の誘引力、恐るべし。

じわじわ進むこと、15分間くらい。
ようやっとチケット受付を通過。

さて、ここから私は事前に計画していた通り、邪道な(笑)鑑賞ルートを進んだ。
混雑する展覧会で、「これだけ観られれば良い」と自分が思い定めた作品に絞って観ると決めている場合は、キッパリと割り切って、目的の作品へまっしぐらに進むのである。
その後、時間の余裕があれば、順路を戻って他の作品を観る。
もちろん、こういう順路無視の観方が許される会場であれば、の話だが。
こういう邪道さが、薄口美術ファンを自認する由縁だ。


さて、そんなわけで、お目当ての美少女目指して他の作品はやり過ごして、ひたすら前進し、エスカレーターで1階へあがる。
この美少女ひとりのために、独立した展示室が設けられているのだ。
間近で観たい人は、ここでまたロビーのようなジグザグ行列。
ただし、絵の前で立ち止まると係員に注意される。
牛歩で進みながら少女と対面するしかない。
もうひとつ、少し離れた場所から止まって鑑賞できる囲い(?)もあるが、こちらは単眼鏡などを持っていないと良く見えないかもしれない。
さて、私は10分程度並んで間近で鑑賞。
最前列に進んだ時は、前の方々が詰まっていたため、予想外に少し止まって鑑賞できた。

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照明も背景の壁の色も良く、少女が引き立って見えた。
近くまで進み、何かを語りかけるような瞳、つややかな唇、鮮やかなターバンを集中してみた。
やっぱり凄い誘引力だ。
フェルメール作品の中では異色の作品で、観る者をひたと大きな目で見つめてくる。
進まなくては、と思うのだけれど、どうしても彼女と合わせた視線を外せず、その前を離れがたい。
とはいえ、後ろの方の迷惑になってしまうので、足を床からはがして少女の前からいったん離れた。
その後で離れたところからも時間をかけて鑑賞。
ここでは、全体的にやや冷静に観ることができた。
『真珠の耳飾りの少女』は、やっぱり目の当たりにすると、頭の中にあるサイズよりも小さかった。
そして、幼くあどけなく快活なような、でも、距離や角度を変えてまた観ると少し大人っぽい表情のようにも見えた。
異色作にして、非常に魅力的な作品だ。
だが、満足いくまで鑑賞できた、というわけにはいかず。
ま、今回は仕方ない。

日を改めて、もっと良い環境で観られる日時を選んで再訪することを心に決め、他の作品を観ることにした。

同じ1階には、レンブラント作品複数を含む肖像画があり、見ごたえ十分。
私が印象に残ったのは、フランス・ハルス  『笑う少年』。

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無邪気で明るい笑顔に、足を止めずにはいられない。
観ている自分も笑顔になる。


また、ロビー階には、もう一点のフェルメール作品がある。

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『ディアナとニンフたち』

画題も描き方も、「お約束」どおり。
私のような素人にとっては、自分をひきつけるフェルメールになる前の作品だ。
でも、もちろん作品の前の人垣の隙間から一生懸命に首を伸ばして目を凝らして鑑賞。
とても品が良くて美しいには違いないが、静かながらも観る者を引き寄せる絶大な魅力は未だ足りないと思えた。


フラントル絵画の巨匠といえば、ルーベンスの作品も。

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「聖母被昇天(下絵)」。

祭壇画の下絵だそうだが、それでも、さすがに劇的。
ルーベンスだし、天使が迎えに下りてくるしで、アニメ『フランダースの犬』のラストを思い出させる。
あ、こんな連想するのは私たけねsweat02


出品数は決して多くないが、なにしろ、どこもかしこも人垣だらけ。
ざっくり鑑賞ながらも疲れました。
お目当ての作品の幾つかは、近くで鑑賞するのが困難だったこともあり、やはり再訪しなくては。
今回は会場の構成の偵察を兼ねて、だったので、夏休みシーズンの終わりごろに再訪したいと思う。

さて、会場を出てみれば、行列はロビーから炎天下の屋外にまで延び、入り口の待ち時間の表示は60分になっていた。
いやはや、大人気である。
学校が夏休みになれば、もっと混みそう。



おまけ。

展覧会鑑賞後、銀座に移動した。

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ミキモトのビルにも、あの少女が。
『マウリッツハイス美術館展』の協賛会社なので、とのこと。

2012-02-19

ジャン=ミシェル・オトニエル:マイウェイ@原美術館

※画像を多く掲載している記事です。


フランスの現代美術作家、ジャン=ミシェル・オトニエルの日本初個展を原美術館で観てきた。

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邸宅美術館の空間とオトニエルの作品が作り出す世界を存分に楽しんできた。


昨年、パリのポンピドゥーセンターで開催され、3ヶ月で20万人が訪れたという展覧会の世界巡回展。
今回は、原美術館の規模と空間にあわせて再構成したという。
なるほど、実に贅沢に立体的に、美術館の空間と作品が生かされていた。

なお、この企画展では、会場で渡される作品リストに記されている注意点を守れば、写真撮影OKという太っ腹。
(常設展示など撮影禁止もあるので、要注意。)
あの原美術館の素敵な空間ときらめくガラスアートの共演をカメラで切り取って持ち帰れるなんて、夢のようじゃありませんか。
ということで、カメラやスマホ等で作品を撮影しておられる方が多数だった。
なお、この記事に掲載している展示作品の写真は、連れが撮影したもの。
私のなんちゃってコンデジは、こういうのは無理なので…。

Myway

エントランスの展覧会タイトルも作品となっている。
ここからが、夢想想的でカラフルなオトニエルの世界だ。

初期作品から最近の作品まで網羅されているので、オトニエルが表現するために使ってきた素材と表現方法の変遷を見られる。

オトニエルは1964年フランス生まれで、現在はパリを拠点に活動している。
1980年代から、硫黄、鉛、蜜蝋といった素材を用いた作品を制作していたが、1993年よりガラスを用い始めた。
現在は、ヴェネツィアのムラーノ島で制作するガラス玉を用いた作品が主となっているようだ。


そういえば、昨年、資生堂ギャラリーでムラーノ島で活動されている三嶋りつ惠さんの個展を見たが、三嶋さんの作品は、全て透明のガラスで、古代の祭祀器のようで、神秘的で静謐だった。
(関連記事は こちら)
その後、サントリー美術館のヴェネツィアングラスの展覧会でも三嶋さんの作品を見たし(記事は書いてなかった…)、昨年から今年にかけて、現代作家のヴェネツィアングラスづいているな…。

ガラスを用いる現代美術作家の多くがそうであるように、オトニエルもガラス工房の職人たちとチームを組んで作品を創り上げるスタイルをとっているそうだ。

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チーム制作ということもあってなのか、ガラスの儚ない美しさと、繋がりのある形状から立ち上る力強さが、不思議と同居しているように感じられたのだ。
この展覧会が今の日本で開かれることによって、その意味が増しているのかもしれない。
深読み?


美術館2階の階段を利用した展示。

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黒が響き合う。


愛らしくロマンティックな作品も。
「私のベッド」という作品。(2002年)

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こんなベッドに横たわってみる夢はどんな夢だろうか。
2階に上がると、上からも鑑賞できる。

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うっとりする…。

大型の立体作品が中心なので、近寄って細部を見たり、引いて全体や展示空間との調和を感じたり…いろいろな角度から楽しめる。

昼間は自然光が窓から入り、作品に表情を与えていた。

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裏庭にも作品が。

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水曜は20時まで開館しているので、照明による輝きも楽しめそう。


食虫植物か未知の海洋生物のような印象を受けた作品。
天井から吊り下げられていたので、尚更に不思議な生き物のように見えた。

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ムラーノガラス特有のしっとりと官能的な輝きと色彩、そしてオトニエルによる有機的な造形のせいか、ガラスの硬質感は感じられず、ぬらりとして柔らかそうで、つい手を伸ばしそうになってしまうので、その衝動を抑えるのに、苦労した。(笑)
もちろん、作品に触れてはいけません。

初期作品は、ちょっとグロテスクな印象のものも…。

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初期のものは、苦悩や葛藤をはっきりと表出しているものが多いように思えたが、現在のものは詩的で抽象的で洗練されている印象を受けた。
いや、ものすごく的はすれなことを書いているのかも…。(汗)


「涙」というタイトルがついていた作品群。

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ひとつずつ観ていくと、血のような赤が使われていたり、何か生物のようなカタチのものがあったり、鋭い針のような形があったりして、綺麗な色や輝きながらも痛々しさが感じられる。
でも、温かいし懐かしいような感覚も。
ガラスという素材だからだろうか。


薄口美術ファンの私は、現代アートで、こんなに感応することは珍しく、会場を2周して、うっとり&じっくりと鑑賞した。
ガラスのアート作品に興味がある方や現代美術がお好きな方はもちろん、私のように現代美術を観る機会が少ない方も、気軽に素直に楽しめると思うので、オススメですよ。


たっぶりと鑑賞した後は、館内の「カフェ・ダール」へ。

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原美術館に行くと、必ず寄るお気に入りの場所だ。

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さすがに寒いので、テーブルは全て室内に入れてあった。
お昼前には満席。
週末限定のワインのフルボトル付のバスケットも、あっという間に完売御礼していた。
私たちは、あまり時間がなかったので本日のパスタと、カヴァをグラスで一杯。

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展覧会の余韻にひたって、外を眺めつつ、ランチをいただいた。食事を終えてカフェを出ると、順番待ちの方々がずらーり。
いやー、本当に人気なのね。


楽しく刺激的な時間を過ごせて、大満足。
オトナ同士のおデートにも、オススメ。

ジャン=ミシェル オトニエル: マイウエィ
会場: 原美術館 (webサイト) 
会期: 2012年1月7日(土)~3月11日(日)
※詳細は美術館webサイトを御照覧下さい。

2012-02-06

没後150年 歌川国芳展@森アーツセンターギャラリー

行こう行こうと思っているうちに前期に行きそびれてしまった歌川国芳展の後期展示に1月末に行って来た。


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没後150年 歌川国芳展
  会場: 森アーツセンターギャラリー
   会期:  2011年12月17日~2012年2月12日
  公式サイト


大人気の国芳をたっぷり観られる機会だけあり、さすがに大盛況という噂は聞いていた。
1月28日(土)に、入場者10万人を突破したとのこと。

私が行った日も、外は寒風が吹いていたが、会場内は老若男女が詰めかけて熱気にあふれていた。
導入部は混雑で行列が出来て停滞していたが、途中から少しずつ列が解けて作品前が無人になっているところも増え、お目当ての作品をしっかり鑑賞できて、満足。

国芳は、本当にサービス精神旺盛で、ぶっ飛んでいて、豪快で、緻密で、洒脱で、優しくて、格好良い。
斬新で思い切ったアイディアが炸裂する作品には、現代アート作品といわれても違和感がないものも多数ある。

展示作品の前で、ニヤニヤしたり、くすくす笑ったり、「へえー」とか「かっけー」と呟いたり。
私を含め、そんな鑑賞者が多かったようだ。
そう、これが国芳。
観る者を喜ばせたい、驚かせたいという彼の心意気、存分に伝わった。
無理をしてでも前期も観ておくべきだったと、ハゲしく後悔。

みどころ満載の国芳作品なので、どれもじっくりガン見したいところだったが、なにしろ、点数が多くて混雑もしていたので、事前に観たいと決めていたコーナーや作品に力を入れて、あとは軽めに。
それでも、観終わった頃には充実しつつも疲労困憊。

よく知られ作品についは書くまでも無いので置いといて(笑)、今回、私が初めて観たテーマや作品のうち、特に印象深かったものについて簡単にメモ。
あくまでも自分用のメモなので、他の方のご参考にはならないと思う。
悪しからず。

今回、私が楽しみにしていたのが美人画。
勇壮な武者絵や伝説の英雄・豪傑のダイナミックな絵、ユーモアとウイットにとんだ戯画、反骨精神を笑いでくるんだ風刺画で人気だが、国芳は美人画も得意。
国芳の美人画を、一度にこれだけの点数を見るのは初めて。
特に、状態の良い団扇絵の美人画を何枚も観られて、眼福。
改めて、国芳美人の魅力を発見できた。
国芳の美人たちは、日々の生活の中での自然な姿が中心で、はつらつとして健康的な色気があり、衣装の色柄がとってもオシャレだ。
子供や小道具との組み合わせやポーズも秀逸。
国芳は、こういう江戸娘らしい、さっぱりした気質で元気の良い女性が好みだったんだろうなあ。
特に、国芳が愛してやまなかった猫と美人との組み合わせが目にとまった。

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    山海愛度図会 ヲゝいたい 越中滑川大蛸(1852年)


美人と猫、両方の表情やポーズのなんとも自然で愛らしいこと。
美人が愛猫にじゃれつかれて爪を立てられ、「もぉー、痛いわよ、しょうがない子ねえ~」なんて言ってそうだ。
絵のためにポーズをとっているのではなく、本当に仲の良い一人と一匹、というのがかわる絵なのだ。
猫好き国芳ならではの美人画、本当にカワイイ。
日本が世界に誇る精神文化のひとつ(なのか?)である「カワイイ」を、よーくわかっていた国芳である。

粋な江戸っ子絵師・国芳の作品に登場する人物のファッションセンスは、相当にイカしている。
国芳は日本橋の京紺屋の息子なので、幼いころから色彩や衣装のコーディネイトへの感度が高かったのではないかしら。
色彩感覚が卓抜していて、色のあわせ方が、時に鮮烈、時に繊細。
前述したとおり、女性たちの着物の色や柄の合わせ方も、愛らしくも颯爽として、あか抜けている。
衣装のみならず、豪傑たちの彫り物も、あでやかで細密で、じっくり見だしたらきりが無い。
そりゃあ、国芳の浮世絵が江戸に一大タトゥー・ブームを巻き起こしたというのも、わかる気がする。
こういう画を描く国芳は、流行に敏感で、頭脳明晰で、粋で、洒脱で……きっと自分が描いたような美人たちにモテモテだったんだろうけど、実はシャイだから、軽口で返すだけで、さらっと受け流してるだけだったり…なんて妄想しちゃう。(笑)

美女の次は美男…というこどて、今に通じるような画だなと思ったカッコイイ一枚が、こちら。
これは有名どころだけど、お気に入りなので、ピックアップ。

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   国芳もやう正札附現金男 野晒悟助(1854年頃)


キリリとした美男が、ドクロ尽くしの衣装を着てポーズと目線をばっちり決めていて、すごくカッコイイ。
写真集とか雑誌の表紙みたいなキメの一枚って感じだ。
古今東西、ドクロはロックな男のマスト・アイテムなのだ。
ドクロだらけなのだが、何故かうっとうしくなく、粋に感じる。
これも粋な絵師・国芳マジック?
良く見れば、衣装の白いドクロは猫でできていて、カワイイ。
格好良さと可愛いさの二重構造。
うーむ、女子のツボを突いてくる。
さすがだ。やっぱり、国芳はモテたはずだ。(断言)

そして、流行に敏い江戸っ子の国芳は、新しい物好き。
こんな作品も展示されていた。

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      忠臣蔵十一段目 夜討之図 (1831-32年頃)


忠臣蔵、討ち入り直前のシーンだが、随分と陰影をつけて西洋画風の異色な作品…。
それにしても、吉良邸の屋敷も塀も、高すぎじゃね?
と思って、隣に展示してあった説明用の写真とキャプションを読んで納得。
オランダの『東西海陸紀行』なる書籍の銅版画挿絵を参考にしていたことが近年わかったとのこと。
写真をみると、ネタ元の挿絵では南国の昼の風景で、家屋の後ろには松でなくてヤシの木が生えていたりする。
これを、師走の雪景色の月夜、冷気漂う中の緊迫した赤穂浪士の討ち入り図に、よくぞ展開したと、彼のイマジネーションの深さに感心しきり。
国芳というと、デザイン性や奇抜なアイディアが目立つが、写実性も見事だ。
写実性を深める上で、西洋画の理論を重視し、随分と西洋画の研究をしていたとのこと。
研究熱心で真面目な人だ。

最後に、私のイチオシの一枚。

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          きん魚づくし ぼんぼん (1842年頃)


「きん魚づくし」シリーズは、これまで8図が確認されていたが、9図めがイタリアで発見され、このたび初公開となった。
貴重な作品をじっくりと観られて感激。
これは、もう文句なしに超ラブリー!
盆の時期に、江戸で幼い女の子たちかが手をつないで唄って練り歩く「ぼんぼん」という遊びを金魚を擬人化して描いたもの。
そういえば、縁日で小さい子が色とりどりの浴衣を着て、ぞろぞろ歩いていると、なんだか金魚みたいだものね。

この立ち姿といい、表情と言い…たまらなく愛らしい。
魚が立っている姿、しかも正面から……だなんて、ちょっとキモチ悪くなりそうだが、国芳にかかれば、こんなにカワイイ。
よちよち歩き(?)のちび金魚ちゃんやおたまじゃくしちゃん?(足が生えているから、たぶんそうだろう…)がお姉さん金魚に手を引かれているのが、微笑ましく、見ているとほのぼのしてくる。
みんなで口を大きく開けて、歌っているらしい。
柳に見立てた藻草が風流を添えている。
国芳の優しさや愛情深さが感じられる一枚。

というこどて、なんだか「カッコイイ」と「カワイイ」でまとめた感想になってしまった。
ボキャブラリーの貧しさがバレバレ。(汗)
国芳の状態の良い作品、初めて公開される作品を、これだけの規模で観られるまたとない機会で、本当に充実した内容だった。
国芳の天才ぶり、オールラウンダーのスーパー絵師ぶりに、改めて驚嘆し、楽しめて、テンションが上がりっぱなしだった。
同時に、粋で、ロックで、情に篤い親分肌の江戸っ子、国芳の人間としての魅力にも触れられた思い。

国芳ブームと言われるほどの昨今の人気。
国芳から、その系脈に連なる画系の画家たちの展覧会も、11月から予定されているそうだ。
(横浜美術館 2012年11月3日~2013年1月14日)
こちらも楽しみだ。


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以下は、脱線気味になっております。
歌川国芳展のみご興味がおありの方は、ここまでが感想となっておりますので、先はスルーしていただくことをお勧めいたします。


 ☆ オマケ ☆

グッズ売り場も大盛況だった。
オシャレな若者にも大人気の国芳らしく、作品の図柄を大胆にあしらったiPhoneケースなんてのもあり、展覧会オリジナルグッズにも実用性も格好よさも兼ね備えているものが出てきている。

そして、なんと、俳優のARATA改め(←オヤジギャグではない。)井浦新さんがデザインを担当されたグッズも販売されていた。
国芳作品から楽しいモチーフを選んでフィーチュアしたTシャツやバッジなど。
井浦さんが美術、とりわけ江戸時代の日本美術に造詣が深いということは、『美の巨人たち』や『男前列伝』に出演されたときに知ったのだが、デザイナーとしてこういう活動もされているということは、今回はじめて知った。
才能豊かな方なのね。
天は、ニ物も三物も、与える人には与えちゃうんだなぁ~。

…あ、そういえば、2010年春に放送された『男前列伝』のパイロット版は「歌川国芳×大森南朋」だった。
猫好きつながりで、国芳の愛猫に導かれ、南朋さんが国芳ワールドに足を踏み入れる…みたいな不思議な感じの番組になっていた。
『ハゲタカ』ファン以外には意味不明だろうが、大森南朋さんが日本橋にいるだけで、妙に盛り上がってしまったという記憶がある。(笑)
おっと、脱線してしまった…。



井浦さんは、崇徳院の怨霊を描いた国芳の浮世絵に魅せられ、崇徳院を好きになったそうで、携帯電話の待ち受け画面もその絵にしていたほどだとか。
怨霊の浮世絵を待ち受けに…。
怖いんですけど…sweat02
だから、大河ドラマ『平清盛』での崇徳上皇役のオファーが来た時には驚き、かつ嬉しかったそうだ。
このエピソード、本記事を書くにあたって偶然に見つけたNHK高松放送局の『平清盛』サイト内のインタビューで読んで知った。
(⇒ こちら)
面倒くさがりなので、テレビドラマのHPとか積極的に見ないのだが、今回は読んで良かった。
うーーむ、こういうことってあるのねえ。
もしかして、面倒見の良い国芳の粋な計らいだったのかもね。bleah
井浦新さんの美しくて怖ろしくて哀しい崇徳院、楽しみ♪


…と、なぜか強引に『ハゲタカ』を経由して、大河ドラマ方面に転がって行ってしまった歌川国芳展の感想である。

2012-01-30

山種美術館の特製和菓子

昨年11月から山種美術館で開催されている『ザ・ベスト・オブ・山種コレクション』。
前期・後期とも鑑賞したが、ブログに展覧会の感想を書けないまま現在に至っている。とほほ…
創立45周年記念の特別展らしく名作中の名作ばかりで素晴らしく力の入った展覧会だ。
後期はまだ開催中なので、記事を書けるよう鋭意努力中…と言いたいが、やっぱり厳しそうなので、別の角度からの記事を。


山種美のロビーにある『カフェ 椿』では、企画展ごとに展示作品にちなんだオリジナル和菓子を販売している。
制作は青山の菓匠「菊家」。
カフェでいただくこともできるし、テイクアウトもできる。


この展覧会のための和菓子を大人買い(?)して写真を撮ってあったので、ご紹介しておく。

まずは、前期展示を観に行った時に買ったもの。


左は「秋のおとづれ」。
宗建と光悦の短冊貼の朝顔がモチーフ。
右は「不二の山」。
雲間の富士山を描いた横山大観の「心神」から。 

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手前左は「菊かさね」。
岩佐又兵衛「官女観菊図」より。
手前右は「きよひめ」。
小林古径「清姫」より清姫のピンク色の装束を表している。
愛らしい姫が恋着のあまり大蛇になってしまうとは…って和菓子からは想像できない。(笑)
奥は山種美術館創立45周年を祝うお菓子「寿の鈴」。

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後期展示の鑑賞後には、カフェでひとやすみして、和菓子を持ち帰り用に調えていただくのを待った。
寒かったので、温かい紅茶を。

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後期の和菓子たち。

「醍醐」。
奥村土牛の「醍醐」に描かれている美しい枝垂れ桜。
中は柚子あんで、とても爽やか。

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「おけら参り」
東山魁夷の「年暮る」の静謐な雪降る京都の街をイメージ。

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「さなえ」
川合玉堂の「早乙女」から。
私はこの絵が大好きで、山種美が三番町の仮施設にあった時代から、お目当て作品のひとつだった。
今回の展覧会で久々に再会できてうれしかった。
田植えする清純で可憐な早乙女たちを思わせるルックスの練り切り。

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Sanae_2

              

山種美術館創立45周年と新年を祝う新作「舞扇」。
おめでたい&ありがたい!

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「波しぶき」
東山魁夷の屏風「満ち来る潮」より。
味もデザインも、このお菓子が一番好みだった。
実にすっきりスタイリッシュに岩と波頭が表わされていると思う。
味も口触りも、申し分なし。
魁夷の海を口から感じるだなんて、陶然とする体験。うふふ。

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Kaii_3           」


眼福、口福。ごちそうさまでした。
いずれも、おすすめです。

※カフェ椿メニュー詳細は こちら。和菓子の説明も掲載されています。

2012-01-12

上田宗箇 武将茶人の世界展@松屋銀座

先日、銀座の松屋へ出かけた際に、店内に掲示してあったポスターが眼に留まった。
上田宗箇(そうこ)って、『へうげもの』に出てくる上田左太郎だっけ?
NHKで放映中の『へうげもの』を観ている私は、時間もあるし観てみようかという軽い気分で、店内に置いてあった割引券付のチラシ(1000円→900円)をしっかと握り締め、いざ。



「ウツクシキ」桃山の茶 秀吉、織部そして宗箇
生誕四五〇年記念 上田宗箇 武将茶人の世界展

 松屋銀座 8階
 2011年12月30日(金)-2012年1月16日(月)

*** 展覧会概要 ***

桃山時代、武将で茶人、かつ作陶も行った一人の人物がいました。
その名は上田宗箇(1563-1650)。
秀吉の側近大名として仕え、武士として一番槍にこだわって勇名を馳せ、関ヶ原の合戦後、広島に移封した縁戚の浅野家で一万七千石の客分として過ごしました。
一方、時の天下一宗匠 古田織部の直弟子として茶の湯に深く傾倒し、共に武家の茶に相応しい価値観の創造に努め、今日まで続く上田宗箇流茶道の礎を築きました。
宗箇は、利休の一切をそぎ落とした「わび」と、織部の多様な「へうげ」の世界を融合させ、自らの茶道具の美意識を「ウツクシキ」という言葉で語っています。
本展は生誕450年を記念し、武将茶人・上田宗箇の美意識の真髄に迫ります。自作の赤楽茶碗 銘「さても」や大坂夏の陣の行軍中に削った竹茶杓 銘「敵がくれ」のほか、秀吉・織部・家康などとの親交を示す上田家伝来の歴史資料や茶道具の名品約150点を展観。また、かつて広島城内にあった上田家上屋敷の茶室「遠鐘」や鎖の間を再現し、日本文化史上、最も華やかであった桃山の「ウツクシキ」武家茶の世界を紹介します。
(松屋銀座webサイト より)


会場のある8階に上がると、目の前には和服のマダムが大勢いらして、まあ華やかかこと。
「さすがに茶の湯をなさる方がたくさん……」と一人合点したが、そのマダムたちは、同じく8階で開催されていた「銀座きもの初市」なるセールのお客様であった……。

武家の茶というシブい展覧会なので、空いているかも…と思って入場したのだが、混雑とまではいかずとも、なかなか盛況。
展示品によってはプチ渋滞も生じていたが、かなりオトナな観覧者ばかりなので、適宜、別の空いているコーナーを先に観るなどして各自でうまく調整していて、ストレスはほとんど感じなかった。

いかにも茶の湯に通じています、というような方ばかりのようで、興味だけでフラフラと入ってしまった観覧者は私だけだったかも…(汗)
ちなみに、私の茶道経験は、高校生の時に、2年間だけ茶道部に在籍して表千家の茶の湯を習ったのみ。
お菓子目当ての「なんちゃって部員」だったため何も身につかず、今となっては基本所作すら忘れているのである。
そんな私なので、茶道具の鑑賞能力はゼロ。(きっぱり)
しかし、上田宗箇のことや茶の湯のことをよく知らない人にも、ある程度は理解できて興味を持てるように、わかりやすいキャプションがついているので大いに助けになった。

さらに、『へうげもの』の作者・山田芳裕氏直筆の織部と宗箇のツーショット絵が展示されていたり、『へうげもの』の画を使った人物相関図パネルがあったりして、『へうげもの』を通じてしか宗箇を知らない私も楽しく観ることができた。
上田宗箇流の点前のビデオ、宗箇についての紹介ビデオも流れており、いたれりつくせり。

なお、日時によっては、上田宗箇流のお点前でお抹茶とお菓子をいただける茶席を設けてあるとのこと
(残念ながら、私が拝見した日には未だ無かった。)



その他の象に残ったことについてだけ、さらっと。

会場に入ってすぐ、造花の枝垂れ桜の下に荷い茶屋(モバイル点前セット?)の設えと、ポスターにある赤地に金糸で波の文様を表した陣羽織が展示されている。
武将と茶人、ふたつの顔を持つ上田宗箇の魅力をあらわしているのだろう。


展示の目玉のひとつである御庭焼の赤楽茶碗「さても」は、炎を思わせる赤が印象的。
へらで一気にザクッと表面を削いであるのが、いかにも勇猛な武将らしい。
武断、という言葉が思い浮かんだ。
強い茶碗だ。
しかし、内側は綺麗に円くならしてあり、そこに宗箇の指の跡が残っている。
土の感触を慈しみ堪能してなでていたのだろう、焼きあがりを見て大いに喜んだだろう、と想像できて、宗箇の存在が近くなった。
「さても」には、晩年の彼の心境が沁み入っているのかもしれない。

へうげものスタッフブログに、山田芳裕氏が「さても」と対面した際の記事が載っている。 (vol.563. 上田宗箇作 赤楽茶碗 銘「さても」 )
上田宗箇流家元の懐の深さ、かっちょええー!


織部好みの沓型茶碗も展示してあった。
斬新で独創的。
シャープで表情豊かで、とても面白い。
織部のキャラクターそのもの。
しかし、私にはちょっとアヴァンギャルドすぎて(?)、茶をいただいても落ち着かないかも……って、そんな心配いらんけど。(笑)


とか、つらつら書くと、さもわかったふうだが、茶道具も資料も盛りだくさんに展示されており、途中からは、やや流してしまった。
ま、ド素人で知識や興味が足りないから、なかなか集中力が続かない。
それでも予定をオーバーして1時間くらい、じっくりと鑑賞させていただき、大満足。


桃山時代、大きく日本人の美の価値観が変化し広がっていった。
その渦中に飛び込み、美を発見し、自ら美を創り上げ、美を発信した男たちの一人が上田宗箇であったことを知る機会を得られて良かった。
彼の愛用した品々、彼の作品である手びねりの茶碗や竹の花入などから、苛烈で大胆で潔くて、心から美しいものを愛する人だったのだろうなあ、と想像させられた。

この展覧会は2月11日より、上田宗箇流の本拠地・広島で開催される。
会場はひろしま美術館。(詳細は⇒こちら

2011-10-22

アールデコの館 - 東京都庭園美術館建物公開(後篇)

前記事の続き。
単に写真が多くなってしまったので、分けただけだが…。

アールデコの館
 東京都庭園美術館
 会期: 2011年10月6日~31日



後篇では、庭園美術館の照明器具と動物たちの写真を集めてみた。

東京都庭園美術館は1933年に建てられた朝香宮邸を利用した邸宅美術館。



隅々まで凝ったデザインが施されている。
もちろん、照明器具も例外ではない。
部屋ごとに異なる美しい照明器具や、その取り付け部も鑑賞対象なのだ。
今回の建物公開展では、照明器具をチェックするのに役立ワークシートが公式サイトからダウンロードできるので(⇒ こちら )、プリントアウトしたものを手にしながらチェックするのも楽しそう。
私は、残念ながら事前にワークシートに気づかず、後から夫が撮っ写真と見比べて、「あー、これ観たね。…でも、どの部屋だっけ?」とボケの再確認をしていた。(泣)

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これは、第一階段上の手すりにある照明。

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こちらは第二階段踊り場の照明。
この邸宅の2階部分を担当した宮内省匠寮部工務課こよるもの。




そして、この館には様々な動物たちもいる。

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アールデコの館の正面玄関前を守るのは、狛犬風の唐獅子(?)。
この和洋折衷がいいんですよ。
その唐獅子の後頭部を見下ろすこ機会は滅多にないので、2階の窓から。
堂々たる後姿。

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こちらは、確か、玄関脇の次の間(香水塔がある部屋)に飾ってあったペンギン。
展覧会ごとに、違う場所に置いてあるような気がする。
行列して歩いているのがカワイイ♪
ペンギン好きにはたまらん。

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こちらは、2階の部屋のラジエーターカバー。

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庭園にはキリンもいますよん。



取りとめなく、写真を載せただけの記事になってしまった…。
いつにも増して内容が薄くてすみません。

東京都庭園美術館は、森と庭園に囲まれたアールデコの洋館であるという特徴を活かした展覧会を企画してくださる。
私が最近(でもないか?)拝見した展覧会としては、有元利夫展と「森と芸術」展(記事にできていない…)があった。
いずれも、会場と作品が一体となる展示であり、コンセプトが伝わりやすく、庭園美術館こその、良い展覧会だった。
リニューアルにより、さらに魅力的な場となり、素敵な展覧会を拝見させていただけるだろうと期待している。

2011-10-20

アールデコの館 - 東京都庭園美術館建物公開(前篇)

東京都庭園美術館は、この11月からリニューアルのため長期休館となる。
これまでの建物公開展には行きそびれていたので、休館前最後の建物公開展に行ってきた。


掲載写真が多くなってしまったので、前後篇に分けます。

美術館の来歴や建築の特徴等については、下記にリンクした公式サイトを参照くださいませ。

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アール・デコの館
 東京都庭園美術館
  会期: 2011年10月6日~10月31日
 ※10月28日~31日は21時まで開館、イベントもあるとのこと。
   詳細は → 展覧会公式ページ 
 

 



1ヶ月足らずの会期なので、会期後半は混雑するだろうと踏んで10月上旬の週末に出かけた。
私は、アールデコより、その前のアールヌーヴォーの有機的デザインのほうが好きなのだが、建物全体の内装となると、すっきりモダンでお洒落なアールデコのほうがいいかも…と、旧朝香宮邸=東京都庭園美術館に来るたびに思う。
なお、由緒貧しき(by 忍たま乱太郎)家の者である私は、「随分と費用がかっているな。」とか、「当時の宮廷費はどうなっとったのか。」とか…そういうことは考えないで鑑賞するのが楽しむコツと心得ている。wink

開館時間に合わせて行くと、珍しく開門待ちの行列が出来ていたが、チケット売り場が開くとサクサク進んで、無問題。

豊かな緑に囲まれた道をゆるゆると歩いていくと鳥の声が聞こえて爽やか気分♪
今回の会期中には、庭園のライトアップもあるそうで、そのための照明設備が庭のあちこちに置いてあった。

入館すると、さすがに盛況で、受付カウンターの前でもプチ行列。
珍しい…。

今回は、フラッシュOFFなどのルールを守れば館内でも写真撮影OKなので、皆さん目が飛び出そうな立派なカメラを手にしていらっしゃる。
恐らく、撮影目的でいらした方も多かっただろう。

今回、私のなんちゃってコンデジでは力不足なので(使う人間の腕と目がダメというのが大きいけど。)、写真撮影は当家の執事(=夫)が担当。
よって、記事に掲載してある写真は彼の作品(?)です。



絵画や工芸品の展覧会ではなく、建物自体を鑑賞する場なので、見学者が思い思いに、好みのインテリアを堪能し、写真撮影をしたり、同行者と感想を静かに語り合ったりしておられた。
皆さん大人の鑑賞態度で、静かに鑑賞し、さりげなく場所を譲りあっていて、良い気分で鑑賞できた。
せっかく美しいものや場所を愛でるために来ているのだから、鑑賞時の心持も美しくありたいものだと、改めて感じた。


まずは、見所(?)の写真をピックアップ。
人を避けて撮るのが大変でした……とは、当家執事の談。(笑)

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玄関ホールの見事なモザイクタイル。
人の足だらけで、なかなか全貌が撮れず。

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玄関ホールと大広間の間にあるラリック作の女神のガラスレリーフ。
庭園美術館に来るといつも、じぃーーっと愛でていると、警備員さんが監視の目を向けてくるので落ち着かないのだが、今回は堂々と色々な角度から鑑賞。

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いつもは遠くから鑑賞するだけの香水塔のある次の間にも入れる。
庭園美術館のシンボル的な香水塔の周りは、常に鑑賞者や写真撮影者がいた。(ので、トリミング…)

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食堂のガラス扉。
食物や食器をモチーフにしたエッチングが施されている。
モダンです~

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食堂のマントルピース。
ラジエーターカバーもアールデコ。
隅々まで見どころアリ。

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いつもは窓にカーテンが引かれていて見えない中庭も、建物公開展の時には眺めることができる。
気持ち良さそう。
ただし、立ち入りは不可。

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北の間には、ラリックの作品がいくつも展示してあった。
日常的に使用していたのかしら……。

中央階段を上がったところにある2階ホールの壁面に、朝香宮家の記録映像が映し出されていた。
婚儀の様子らしい。

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モダンなアールデコの館に、十二単とおすべらかしのお雛様のような花嫁さんの取り合わせ…。



後篇に続きます。

2011-09-25

犬塚勉展@日本橋高島屋

会期終了ぎりぎりの投稿になってしまたが……。

先週の休日に、日本橋高島屋で開催中の絵画展に行ってきた。

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犬塚勉展 - 純粋なる静寂

 9月7日~9月26日
 日本橋高島屋  8階ホール

多摩に住み、美術教師をしながら、多摩や山の風景を描き続け、38歳で夭逝した画家 犬塚勉没後20年の2009年にNHKの日曜美術館で紹介されると、多くの感動の声が寄せられて注目を集めました。山に登り、自然と一体になって描いた作品は、スーパーリアリズムともいえる精緻な筆遣い。あるがままの自然に魅せられ、谷川岳で遭難して幕を閉じた彼の人生は、すべて自然を描くことに捧げられたといっても過言ではありません。本展では、遺された絵画とデッサンなど110余点を一堂に展開。これまで広く知ら
れることのなかった犬塚勉の画業をご紹介いたします。
(犬塚勉展パンフレットより)

私が犬塚勉のことを知ったのは、ごく最近。
2009年にNHK教育『日曜美術館』で紹介されていたのを偶然に見て、その作品の精緻さと深い精神性に圧倒された。
2009年7月5日放送 『私は自然になりたい』 )


『日曜美術館』は、昔からよく見ている番組だが、毎週かならず、というわけではない。
興味あるテーマの時には事前にチェックしておいてチャンネルを合わせるが、そうでないときは、日曜の朝食後にザッピング中に何かひっかかれば見る。

その時は、”ザッピングしてひっかかかった”のほうで、「写真みたいだけど、写真より密度が濃い…。単なる写実を突き抜けてる感じだ。」と、彼が描いた草木や岩の絵に目が釘付けになったのだ。
当時は未だテレビを買い換える前で、画質は良くなかったはずなのだが、それでも作品の持つ静かな力は十分に伝わったのだと思う。

そして、途中で流れた犬塚の制作ノートを朗読する声に聞き覚えがあり、「あっ、この声は…!」と思わずテレビに近寄ってしまったのである。
俳優の大森南朋さんの声だった。
2009年7月初旬といえば、私が映画『ハゲタカ』に初見から強烈なハマり方をして間もない頃。
寝ても醒めても『ハゲタカ』と主人公・鷲津政彦のことで頭が一杯という異常な状態であった。
なので、『ハゲタカ』の主人公・鷲津政彦を演じた大森南朋さんの声に怖ろしく敏感に反応する耳の持ち主になっていたのだ。
どんなに鷲津に夢中になっても、演じる大森さんへの興味は「いい仕事をする役者さん」として関心があるのみで、ご本人への興味は持っていないのだが、声にだけは今もって敏感に反応する。(笑)

とまあ、やや邪な動機も加わって、熱心にこの回を観て、さらに翌週の再放送も観たくらいに、犬塚の絵iに興味を感じて、是非とも本物を間近でじっくりと観たいと思った。
その後、本物を観る機会はなかなか得られなかったのだが、今月、上記展覧会があると知り、ドキドキしながら高島屋を訪れたのである。


休日朝のデパートは、まだ人影まばらで、展覧会開場前の入場券売り場にも二人ほどお客さんがいたたけ。
空いているらしい…と思って入場したら、なんと、各作品の前に1~3人程度がいる。
皆さん、お早い。


展覧会の内容は、充実したものであった。
素描を含む100点余を、大きく2部に分けてある。
第1部「画家としての変遷」と第2部「自然を描く」では、同じ人の作品かと思うほどに全く違っていたので、驚いた。


第1部では、暗い色調で描かれたナイーヴな印象の自画像から出発して、彼が描きたい世界、そのための手法を模索していく過程が手に取るように感じられた。
スペイン旅行で刺激を受けて、鮮やかな色を用いた幻想的な作品を描いていた時期もあり、そのスペイン旅行で日本の良さを描きたいと思うようにもなって、地元・多摩の風景を青いトーンで描いたり、なんと(?)仏画も描いたり、様々なことにチャレンジしていたようだ。
何をどう表現したいのか、若い画家が自分自身に問いかけていた時期。
それなりに魅力的な作品だとは思ったが、やはり第2部の「これぞ犬塚勉の世界」という精緻で静謐、そして画家の眼差しを感じ取れるような力を放つ作品たちとは、輝きの度合いが全く違う。
しかし、テレビで紹介された犬塚の作品世界が生まれるまでの苦闘の道のりを辿れたのは、第二部の彼の作品に近づくうえで、とてもプラスになったと思う。


さて、いよいよ第2部。
超写実的な超絶技巧で、自然を描いた作品群。
犬塚の転機となった1984年の作品を目にして、「えっ写真じゃないの!?」という驚きの声を漏らしておられる方が多数。

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        夏の終わり (1984年)

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        山頂A (1984年)


ここからは、一枚ごとに、精緻な筆さばきと絶妙な画面構成に驚嘆して息を吸い、ついで知らないうちに息を止めて近寄ったり離れたりして、鑑賞に時間と集中力を要するようになっていった。
他の鑑賞者の方々も同様らしく、だんだん作品の前にいる人数が増えていった。
犬塚作品の本当の凄みと魅力は、本物を見なければわからないのだと、改めて実感した。
それから、今更知ったのだが(なにせ予習無しで行ったので…)、犬塚の画のクリアな輝きや、面相筆での細密な表現の鮮やかさは、アクリルだからなのか、と初めて知った。
前述の日曜美術館で言及していたのだろうと思うが、全く忘れていた。
ずさんな鑑賞者である。
やはり、アート鑑賞万年初心者だ。


小さな草の一本ずつの微妙なグラデーション、光と影のコントラスト。
濃密な草の匂い、古木のざらついた肌の質感。
ごつごつした岩石の存在感。
まるで自分がそこにいるかのように、犬塚の視点と、彼が感じていたであろう、そこにあるすべてのものに宿る生命の輝きを受け止める感覚を追体験している自分に気づく喜び。
こういう感覚は、やはり本物をじっくりと鑑賞できてこそだ。

超写実的で細密な筆遣いはそのままに、どんどん描きたい自然に身も心も肉迫していき、想いが収斂され、純化していったのがよく分る。
絶筆となった≪暗く深き渓谷の入り口 2≫は、まさに、展覧会のサブタイトルにあるとおり純粋なる静寂。

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        暗く深き渓谷の入口 2 (1988年)



会場の出口近くに映像コーナーがあり、犬塚の足跡を10分弱に簡潔にまとめたビデオが流れていて、これを観てから、再度、この絶筆作品の前に立った。
怖いくらいに静かで暗い渓谷の入り口に、引き込まれそうになった。


「もう一度、水を見てくる。」

犬塚は、そう言って谷川岳に出かけて、遭難し、不帰の人となってしまった。

若くして亡くなった方の短い画業をたどる展覧会というのは、どうしても画家が芸術と濃密に激しく向き合って、全速力で生き抜いた証を目の当たりにするような気持ちになりながら観てしまうし、絶筆を前すると胸がつまる。

この作品が、犬塚の画業第2期の到達点、いや、あるいは次の段階への転換点であったのかもしれない。
ここから更に、次の展開があったのではないかと思えた。
この先を観てみたかったと思う。
享年38歳。
若すぎる。


良い展覧会だった。
犬塚勉という画家を知ることが出来て、本当に良かった。




この展覧会は、以下のとおり巡回します。


京都高島屋
2012年1月6日(金)〜23日(月)


東御市梅野記念絵画館
2012年4月14日(土)〜6月3日(日)

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